膵頭十二指腸切除術後に720°の臓器軸回転を来した横行結腸軸捻転症の1例

症例は2019年に他院で胆管癌に対し膵頭十二指腸切除術(Child変法再建)を施行された86歳の女性で,2022年12月に下腹部痛,嘔吐,下痢を主訴に当院に救急搬送された.造影CTで横行結腸の捻転像と右側結腸の拡張を認め,横行結腸軸捻転症と診断した.腸管血流は維持されていたため,下部消化管内視鏡での減圧,整復を試みたが困難であり手術を施行した.手術所見では後結腸経路で挙上空腸を通した横行結腸間膜の間隙に右側結腸が入り込み,横行結腸が臓器軸に720°捻転していた.捻転を解除し,間隙を縫合閉鎖し手術を終了した.術後15日目に転院され,その後6か月再発は認めていない.結腸軸捻転症のうち横行結腸軸捻転...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 57; no. 7; pp. 350 - 357
Main Authors 山下, 柚子, 前田, 将宏, 桑原, 道郎, 谷岡, 信寿
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.07.2024
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2023.0054

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Summary:症例は2019年に他院で胆管癌に対し膵頭十二指腸切除術(Child変法再建)を施行された86歳の女性で,2022年12月に下腹部痛,嘔吐,下痢を主訴に当院に救急搬送された.造影CTで横行結腸の捻転像と右側結腸の拡張を認め,横行結腸軸捻転症と診断した.腸管血流は維持されていたため,下部消化管内視鏡での減圧,整復を試みたが困難であり手術を施行した.手術所見では後結腸経路で挙上空腸を通した横行結腸間膜の間隙に右側結腸が入り込み,横行結腸が臓器軸に720°捻転していた.捻転を解除し,間隙を縫合閉鎖し手術を終了した.術後15日目に転院され,その後6か月再発は認めていない.結腸軸捻転症のうち横行結腸軸捻転症は1~4%と非常にまれで,膵頭十二指腸切除後に発症した報告は本邦ではみられない.本病態は右側結腸の授動と横行結腸間膜の間隙に起因しており,膵頭十二指腸切除術における潜在的な合併症の一つと考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2023.0054