巨大囊胞を伴った遊走脾に対して待機的手術を施行した1例

症例は31歳の女性で,下腹部膨満感を主訴に精査が行われ,巨大囊胞を伴う遊走脾と診断された.遊走脾は捻転により緊急手術となることがあるが,本症例では腹部違和感症状のみを認めていたため待機手術の方針として,開腹脾部分切除,脾固定術を施行した.捻転予防の固定術は,温存する脾臓に胃脾間膜しか有していなかったため周囲組織への固定は困難であった.そのため左後腹膜を剥離してポケットを作成してそこに脾臓を納め,その腹膜を周囲組織と縫合することによって残存脾を収納し固定した.術後経過は良好で再発なく術後半年以上経過している.遊走脾に対して捻転による絞扼を疑われ緊急手術を施行した報告は散見するが,脾囊胞を有する遊...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 51; no. 2; pp. 132 - 137
Main Authors 松田, 宙, 本告, 正明, 團野, 克樹, 中塚, 梨絵, 藤谷, 和正, 伏見, 博彰, 久保田, 勝, 北川, 彰洋, 宮崎, 進, 岩瀬, 和裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2018
Subjects
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2017.0058

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Summary:症例は31歳の女性で,下腹部膨満感を主訴に精査が行われ,巨大囊胞を伴う遊走脾と診断された.遊走脾は捻転により緊急手術となることがあるが,本症例では腹部違和感症状のみを認めていたため待機手術の方針として,開腹脾部分切除,脾固定術を施行した.捻転予防の固定術は,温存する脾臓に胃脾間膜しか有していなかったため周囲組織への固定は困難であった.そのため左後腹膜を剥離してポケットを作成してそこに脾臓を納め,その腹膜を周囲組織と縫合することによって残存脾を収納し固定した.術後経過は良好で再発なく術後半年以上経過している.遊走脾に対して捻転による絞扼を疑われ緊急手術を施行した報告は散見するが,脾囊胞を有する遊走脾に対して術式は確立されてはおらず,本症例のように待機的手術が施行でき,さらに脾臓を一部温存できた症例はまれであるため報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2017.0058