下腸間膜静脈周囲リンパ節―献体10例における肉眼的・顕微鏡的検索

目的:左側結腸癌に対する手術において,下腸間膜静脈の処理については一定した見解がなく,下腸間膜静脈とその周囲組織は一般的に郭清の対象として考えられていない.また,下腸間膜静脈周囲のリンパ節の存在自体も明らかにされていない.著者は以前,下腸間膜静脈周囲リンパ節に転移を認めた下行結腸癌の症例を経験した.その経験に基づき,複数の解剖実習体を用いて下腸間膜静脈周囲リンパ節の探索を行い,その存在を明らかにすることを試みた.方法:10例の解剖実習体を用いて下腸間膜静脈周囲リンパ節の探索を行った.下腸間膜静脈の肉眼的観察の後,周囲組織を含めて下腸間膜静脈を採取し,顕微鏡下にリンパ節を検索した.結果:全10例...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 4; pp. 261 - 266
Main Authors 吉松, 軍平, 大沼, 忍, 北田, 容章, 元井, 冬彦, 石田, 晶玄, 内藤, 剛, 海野, 倫明, 坂田, 直昭, 片桐, 宗利
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2015.0148

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Summary:目的:左側結腸癌に対する手術において,下腸間膜静脈の処理については一定した見解がなく,下腸間膜静脈とその周囲組織は一般的に郭清の対象として考えられていない.また,下腸間膜静脈周囲のリンパ節の存在自体も明らかにされていない.著者は以前,下腸間膜静脈周囲リンパ節に転移を認めた下行結腸癌の症例を経験した.その経験に基づき,複数の解剖実習体を用いて下腸間膜静脈周囲リンパ節の探索を行い,その存在を明らかにすることを試みた.方法:10例の解剖実習体を用いて下腸間膜静脈周囲リンパ節の探索を行った.下腸間膜静脈の肉眼的観察の後,周囲組織を含めて下腸間膜静脈を採取し,顕微鏡下にリンパ節を検索した.結果:全10例中8例に,下腸間膜静脈周囲リンパ節を認めた.うち4例において脾静脈・上腸間膜静脈合流部からも左結腸動脈交差部からも離れた中間部にリンパ節を認めた.以上より,下腸間膜静脈周囲リンパ節は比較的高頻度に存在するものと考えられた.結語:下腸間膜静脈周囲リンパ節は古くは1900年代の教科書にも記載されているが,今日の大腸癌手術においてはほとんど顧みられていない.しかしながら,左結腸リンパ流の主経路にある左結腸リンパ節が腫瘍の転移などで閉塞した場合は下腸間膜静脈に沿ってリンパ節転移する可能性がある.下腸間膜静脈周囲リンパ節の臨床的な意義を明らかにするためにも今後の臨床データの蓄積が必要である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2015.0148