サツマイモ基腐病に強度の抵抗性を有する青果・食品加工用サツマイモ品種「べにひなた」の育成およびその特性

サツマイモの主要産地のひとつである南九州(鹿児島県および宮崎県)では,2018年に国内で初めて発生したサツマイモ基腐病により甚大な被害が生じた.青果・食品加工用の主要品種「高系14号」および「べにはるか」はいずれも十分な抵抗性を備えておらず,抵抗性品種が求められていたことから,青果・食品加工用抵抗性品種「べにひなた」を育成した.「べにひなた」は,サツマイモ基腐病への強度の抵抗性と外観品質の高さを特長とするほくほくとしたタイプの品種である.塊根は皮色が“紫赤”で形状整否が“中~やや整”であり,外観の評価は“中~やや上”であった.育成地における収量性は,標準栽培および早掘栽培のいずれの作型でも「高...

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Published in育種学研究 Vol. 27; no. 1; pp. 39 - 50
Main Authors 川田, ゆかり, 小林, 晃, 髙畑, 康浩, 境, 哲文, 甲斐, 由美, 境垣内, 岳雄, 田淵, 宏朗, 末松, 恵祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本育種学会 01.06.2025
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ISSN1344-7629
1348-1290
DOI10.1270/jsbbr.24J17

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Summary:サツマイモの主要産地のひとつである南九州(鹿児島県および宮崎県)では,2018年に国内で初めて発生したサツマイモ基腐病により甚大な被害が生じた.青果・食品加工用の主要品種「高系14号」および「べにはるか」はいずれも十分な抵抗性を備えておらず,抵抗性品種が求められていたことから,青果・食品加工用抵抗性品種「べにひなた」を育成した.「べにひなた」は,サツマイモ基腐病への強度の抵抗性と外観品質の高さを特長とするほくほくとしたタイプの品種である.塊根は皮色が“紫赤”で形状整否が“中~やや整”であり,外観の評価は“中~やや上”であった.育成地における収量性は,標準栽培および早掘栽培のいずれの作型でも「高系14号」より優れ,「べにはるか」と同等かやや優れた.サツマイモ基腐病抵抗性は“強”であり,“やや弱”の「高系14号」および“弱~やや弱”の「べにはるか」より優れた.標準栽培および早掘栽培の蒸しいも特性(貯蔵期間1~2週間)は,肉色が“淡黄白”で「高系14号」および「べにはるか」より薄く,肉質は「高系14号」および「べにはるか」と同等の“中”,食味は“やや上”であり,糖度は「高系14号」より高く「べにはるか」より低かった.青果・食品加工用のサツマイモ品種を利用面で主に特徴づけるのは肉質であるが,標準栽培した塊根を3か月間貯蔵しても「べにひなた」の肉質は粘質とならず,「べにはるか」より「高系14号」に近いタイプに位置づけられた.普及見込み地域(宮崎県および鹿児島県)の公設試験研究機関による試験では,外観品質の高さは育成地と同様に高く評価され,肉質は“粉”~“やや粉”の評価であり,上いも重は「高系14号」比79~126%であった.「べにひなた」は,サツマイモ基腐病の被害状況に応じて産地に取り入れられ,「高系14号」を補完する用途で利用されることで,南九州における青果・食品加工用サツマイモの安定生産に貢献すると期待される.
ISSN:1344-7629
1348-1290
DOI:10.1270/jsbbr.24J17