遂行抑止現象の解消に向けた動感修正指導に関する発生運動学的研究 平均台の「ロンダート宙返り下り」を例証として
「I 問題の所在」体操競技において, 選手やコーチを悩ませる問題の1つとして運動の「遂行抑止現象」がある. ここでいう遂行抑止現象とは, 運動の中核的な局面で突如として遂行を中断してしまう, または, 躊躇や停滞をしてしまうという事態を指す. これは, すでに自動化して何の不安もなく動けていたのにも関わらず, 突発的に襲いかかる「破局的消滅」(金子, 2015a)の問題として取り上げられ, 初心者におけるまぐれ発生の過程で頻発する「偶発的な動感消滅」とは区別される. 渡辺(1982)によると, この遂行抑止現象の発生が認められた選手が共通に言うことはある種の怖さであり, それは初めて技に臨む場...
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Published in | 体育学研究 Vol. 68; pp. 163 - 178 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
2023
日本体育・スポーツ・健康学会 |
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Summary: | 「I 問題の所在」体操競技において, 選手やコーチを悩ませる問題の1つとして運動の「遂行抑止現象」がある. ここでいう遂行抑止現象とは, 運動の中核的な局面で突如として遂行を中断してしまう, または, 躊躇や停滞をしてしまうという事態を指す. これは, すでに自動化して何の不安もなく動けていたのにも関わらず, 突発的に襲いかかる「破局的消滅」(金子, 2015a)の問題として取り上げられ, 初心者におけるまぐれ発生の過程で頻発する「偶発的な動感消滅」とは区別される. 渡辺(1982)によると, この遂行抑止現象の発生が認められた選手が共通に言うことはある種の怖さであり, それは初めて技に臨む場合の, 未知に対する怖さではなく, ある「焦燥感」を伴った, 自己への不信ともいえるような怖さであるという. 遂行抑止現象の発生はスポーツ実践現場では珍しいことではないが, 運動実施者の意志や努力に反して遂行の途中で試技を放棄せざるを得なくなる, あるいは, 不本意な運動結果につながるなど, パフォーマンスの大きな阻害要因になるだけでなく, 急な運動の中断は怪我のリスクも高める. |
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ISSN: | 0484-6710 1881-7718 |
DOI: | 10.5432/jjpehss.22097 |