プロテインS欠乏症に伴う上腸間膜静脈・門脈血栓症による回腸壊死の1例

症例は55歳の男性で,激しい腹痛を主訴に当院に搬入された.腹部造影CTにて門脈から上腸間膜静脈(以下,SMV)にかけて血栓を認め,回腸の浮腫および腹水を認めたために門脈・SMV血栓症による回腸壊死の診断にて,緊急手術を施行した.腹腔内には漿液性の腹水を認め,回盲弁より20~70 cm口側の回腸が壊死していた.術中エコーにてSMVは塞栓しており,門脈本幹にも血栓が存在し,門脈血流の多くは脾静脈から流入していた.壊死腸管切除と腸瘻造設を行い,手術を終了した.24時間後にsecond-look operationを行ったが,新たな壊死腸管は認めなかった.将来的に門脈本幹の完全閉塞が危ぐされたため,門...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 42; no. 11; pp. 1717 - 1722
Main Authors 米沢, 圭, 中川, 淳, 後藤, 俊彦, 張谷, 素子, 小林, 敏樹, 竹花, 卓夫, 前田, 賢人, 森木, 利昭, 宮下, 正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.11.2009
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Summary:症例は55歳の男性で,激しい腹痛を主訴に当院に搬入された.腹部造影CTにて門脈から上腸間膜静脈(以下,SMV)にかけて血栓を認め,回腸の浮腫および腹水を認めたために門脈・SMV血栓症による回腸壊死の診断にて,緊急手術を施行した.腹腔内には漿液性の腹水を認め,回盲弁より20~70 cm口側の回腸が壊死していた.術中エコーにてSMVは塞栓しており,門脈本幹にも血栓が存在し,門脈血流の多くは脾静脈から流入していた.壊死腸管切除と腸瘻造設を行い,手術を終了した.24時間後にsecond-look operationを行ったが,新たな壊死腸管は認めなかった.将来的に門脈本幹の完全閉塞が危ぐされたため,門脈の血栓除去を行った.術後は抗凝固療法を行い経過良好にて退院した.原因検索をしたところ,プロテインS活性が41.1%と低下しており欠乏症と考えられた.プロテインS欠乏症に起因する門脈・SMV血栓症はまれであり,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.42.1717