糖原病Ia型に合併した肝細胞腺腫に対し2回の切除術を施行した1例

• Published in: 日本消化器外科学会雑誌 Vol. 43; no. 10; pp. 1019 - 1024
• Main Authors: 橋本, 真治, 池田, 直哉, 大河内, 信弘, 近藤, 匡, 福永, 潔, 小田, 竜也, 佐々木, 亮孝
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.10.2010
• ISSN: 0386-9768; 1348-9372
• DOI: 10.5833/jjgs.43.1019

糖原病Ia型は先天性糖代謝異常症の一つで，多発肝細胞腺腫を高率に合併する．今回，同腺腫内出血に対し，肝切除術を2回施行した1例を経験したので報告する．症例は1歳時に糖原病と診断され，多発肝細胞腺腫を経過観察されていた18歳の女性で，突然の左上腹部痛と発熱を認め，精査で肝外側区域の腺腫内出血と診断された．止血のため選択的肝動脈塞栓療法を施行したが，腹痛や発熱が続いたこと，および悪性腫瘍の可能性を否定できないことから，肝外側区域切除術を施行した．その3年後，肝右葉の腺腫内出血を伴い増大傾向が見られた腺腫に対し，再度の肝切除術を施行した．糖原病に伴う多発腺腫には，肝移植術が根本的治療であるが，脳死ドナーが少ない本邦において，切除術を中心とした腺腫治療が有用であると考えられた．また，多発腺腫の治療法を選択する時に，30歳代で肝癌発生が多いことを留意すべきと思われた．