抗リン脂質抗体症候群(APS)による深部静脈血栓症にカテーテル治療が奏功し,下大静脈フィルターの永久留置を回避できた1例

症例は, 31歳, 男性. 主訴は, 左下肢全体の腫脹と疼痛. 血液検査で血小板減少, D-dimerとFDPの上昇を認めた. 造影CT検査では右肺動脈, 左大腿静脈と下腿の血栓を認めたほか, 脾梗塞も疑われた. 急性期の深部静脈血栓症(deep venous thrombosis; DVT)と診断し, 回収可能型下大静脈フィルターを留置して, ワルファリン内服とウロキナーゼの経静脈的全身投与を開始した. しかし, 第6病日の造影CTでは肺動脈の血栓は消失していたものの, 左大腿静脈の血栓は入院時と変化を認めなかった. そのため第7病日にカテーテル血栓溶解吸引療法を施行した. まず, ガイディ...

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Published in心臓 Vol. 42; no. 8; pp. 1106 - 1112
Main Authors 下平, 雅規, 手島, 保, 田辺, 康宏, 北條, 林太郎, 高野, 誠, 仲井, 盛, 弓場, 隆生, 小宮山, 浩大, 辰本, 明子, 深水, 誠二, 櫻田, 春水
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2010
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Summary:症例は, 31歳, 男性. 主訴は, 左下肢全体の腫脹と疼痛. 血液検査で血小板減少, D-dimerとFDPの上昇を認めた. 造影CT検査では右肺動脈, 左大腿静脈と下腿の血栓を認めたほか, 脾梗塞も疑われた. 急性期の深部静脈血栓症(deep venous thrombosis; DVT)と診断し, 回収可能型下大静脈フィルターを留置して, ワルファリン内服とウロキナーゼの経静脈的全身投与を開始した. しかし, 第6病日の造影CTでは肺動脈の血栓は消失していたものの, 左大腿静脈の血栓は入院時と変化を認めなかった. そのため第7病日にカテーテル血栓溶解吸引療法を施行した. まず, ガイディングカテーテルで血栓を吸引し, その後, パルススプレー法を用いて血栓内に直接ウロキナーゼを注入して, 残存血栓を可能な限り吸引した. 治療直後から血流は著明に改善し, 左下肢の腫脹は劇的に回復した. 第10病日に下大静脈フィルターを回収した際に, フィルター内に捕獲血栓を認めたことから, フィルターが肺塞栓予防に有効だったと考えられた. 入院中の検査で, 抗カルジオリピン抗体およびループスアンチコアグラント陽性が判明し, 抗リン脂質症候群(APS)に起因するDVTと診断した. APSによるDVTに対してパルススプレー法を用いたカテーテル血栓溶解吸引療法が非常に有効であり, フィルターの永久留置を回避し得た症例を経験したので報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.42.1106