要人銃撃事件における医療者としての考察 -防衛医学研究からの死因推察と米軍TCCCに基づく瞬時防御策

2022年7月に奈良県奈良市で国家の要人が銃撃されて死亡した. 大変悲しい事件であり, 直接死因は出血死と公表された. 出血が死亡の大きな要因であることは疑う余地がないが, 公表された発生後の時間的経緯から, 出血性ショックと直後からの心肺停止との病態に時間的解離があるように思われた. 我々は以前から爆傷・衝撃波損傷の基礎研究および銃創・爆傷の教育・研修を防衛医科大学校で行ってきた. 銃撃による衝撃波や空洞形成が呼吸・循環の中枢である延髄・脳幹部に損傷を与えて, 即時の心肺停止と至った可能性がある. 我々が公表した科学的論文を基盤に病態を考察した. また, 米軍の戦術的戦傷救護に基づく瞬時の防...

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Published in日本外傷学会雑誌 Vol. 38; no. 3; pp. 382 - 386
Main Authors 山村, 浩史, 清住, 哲郎, 齋藤, 大蔵, 霧生, 信明, 関根, 康雅, 戸村, 哲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本外傷学会 20.07.2024
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ISSN1340-6264
2188-0190
DOI10.11382/jjast.38.3_21

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Summary:2022年7月に奈良県奈良市で国家の要人が銃撃されて死亡した. 大変悲しい事件であり, 直接死因は出血死と公表された. 出血が死亡の大きな要因であることは疑う余地がないが, 公表された発生後の時間的経緯から, 出血性ショックと直後からの心肺停止との病態に時間的解離があるように思われた. 我々は以前から爆傷・衝撃波損傷の基礎研究および銃創・爆傷の教育・研修を防衛医科大学校で行ってきた. 銃撃による衝撃波や空洞形成が呼吸・循環の中枢である延髄・脳幹部に損傷を与えて, 即時の心肺停止と至った可能性がある. 我々が公表した科学的論文を基盤に病態を考察した. また, 米軍の戦術的戦傷救護に基づく瞬時の防御策についても言及した.
ISSN:1340-6264
2188-0190
DOI:10.11382/jjast.38.3_21