東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科における口唇裂・口蓋裂患者の交叉咬合に関する40年間の臨床統計的観察
【目的】東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科(以下当科)は,1981年の開院以来口唇裂・口蓋裂患者の咬合異常に対して異なる術式で口唇および口蓋形成術を施行する多くの地域医療施設と連携しながら長期的な矯正歯科治療を行っている。本研究では口唇裂・口蓋裂患者の交叉咬合に関する調査を行い,その変遷についての臨床統計的観察を行った。また,異なる術式で口蓋形成術を施行する施設での交叉咬合の変遷を調査し,当科の地域における役割について検討を行った。 【方法】東京歯科大学千葉病院開院1981年から2020年の40年間に当科を来院し,資料採得および診断を行った口唇裂・口蓋裂患者1,254名のうち口蓋形成術...
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Published in | 日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 49; no. 1; pp. 1 - 9 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口蓋裂学会
2024
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0386-5185 2186-5701 |
DOI | 10.11224/cleftpalate.49.1 |
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Summary: | 【目的】東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科(以下当科)は,1981年の開院以来口唇裂・口蓋裂患者の咬合異常に対して異なる術式で口唇および口蓋形成術を施行する多くの地域医療施設と連携しながら長期的な矯正歯科治療を行っている。本研究では口唇裂・口蓋裂患者の交叉咬合に関する調査を行い,その変遷についての臨床統計的観察を行った。また,異なる術式で口蓋形成術を施行する施設での交叉咬合の変遷を調査し,当科の地域における役割について検討を行った。 【方法】東京歯科大学千葉病院開院1981年から2020年の40年間に当科を来院し,資料採得および診断を行った口唇裂・口蓋裂患者1,254名のうち口蓋形成術を必要とする口蓋裂患者,片側性および両側性唇顎口蓋裂患者の動的治療開始時期である470名を調査した。年代別推移を調査するために1981年から2020年を10年ごとに第1期から第4期とした。平行模型にて交叉咬合の部位による分類および歯列弓長径,歯列弓幅径の計測を行った。さらに,口蓋形成術式の違いにおける交叉咬合発現部位を検討するため,異なる口蓋形成術を施行するおもな紹介元との2施設間での比較検討を行った。 【結果】交叉咬合の部位による分類では,第1期から第4期にかけて交叉咬合が認められないType1の割合が増加し,全顎的に交叉咬合を呈するType6の割合は減少した。歯列弓長径,歯列弓幅径は年代別推移において変化は認められなかったため,歯列弓形態の変化ではなく上下顎の前後的な顎間関係の変化が交叉咬合の減少に寄与していることが推測される。口蓋形成術式の違いにおける交叉咬合発現部位では両側性唇顎口蓋裂の第2期はType6の割合が多く有意差を認めたことから,二段階口蓋形成術の治療成績が良好であったと考えられる。しかしながら,ほかの年代およびほかの裂型において有意差を認めなかったことから術式の異なる施設間での交叉咬合の発現部位の差は少ないことが推測される。 【結論】当科における口蓋裂,片側性および両側性唇顎口蓋裂患者の交叉咬合の発現は経年的に減少した。交叉咬合の発現部位と歯列弓幅径,歯列弓長径の変化において関係性は認められなかった。口蓋形成術の違いにより患者の交叉咬合の分類に有意差は認められなかった。 |
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ISSN: | 0386-5185 2186-5701 |
DOI: | 10.11224/cleftpalate.49.1 |