n-アルカン薄膜の構造形成における基板構造の効果

有機分子薄膜の特異な積層構造の形成過程を理解するため,固体基板上での n-アルカン(C19H40)超薄膜の融液からの結晶化過程を,分子動力学シミュレーションを用いて究明した.特に,固体基板と n-アルカンとの相互作用の強さ,基板表面の原子的構造,および結晶化温度に注目した.基板表面の構造の詳細にかかわらず,過冷却度が小さく基板の引力相互作用が弱い場合は分子鎖が基板に垂直配向した単分子膜を形成する傾向が顕著になり,逆に過冷却度が大きく基板引力が強い場合は分子鎖が基板表面に平行に配向した薄膜が得られた.また,詳細な原子的構造を考慮した基板(atomic-wall)の場合,分子鎖の基板上での吸着位置...

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Published in高分子論文集 Vol. 67; no. 3; pp. 198 - 202
Main Authors 三根, 雅生, 浦上, 直人, 野崎, 浩二, 山本, 隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 高分子学会 2010
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Summary:有機分子薄膜の特異な積層構造の形成過程を理解するため,固体基板上での n-アルカン(C19H40)超薄膜の融液からの結晶化過程を,分子動力学シミュレーションを用いて究明した.特に,固体基板と n-アルカンとの相互作用の強さ,基板表面の原子的構造,および結晶化温度に注目した.基板表面の構造の詳細にかかわらず,過冷却度が小さく基板の引力相互作用が弱い場合は分子鎖が基板に垂直配向した単分子膜を形成する傾向が顕著になり,逆に過冷却度が大きく基板引力が強い場合は分子鎖が基板表面に平行に配向した薄膜が得られた.また,詳細な原子的構造を考慮した基板(atomic-wall)の場合,分子鎖の基板上での吸着位置の自由度に幾何学的な制限が生じ,原子構造を無視した基板(flat-wall)に比べて分子鎖が基板に対して垂直に立とうとする傾向が見いだされた.
ISSN:0386-2186
1881-5685
DOI:10.1295/koron.67.198