話題構造の可視化による医師―患者コミュニケーション支援手法

慢性疾患の増加に伴う疾病構造の変化に伴い,病気を科学的な視点で捉えるだけでなく,病いとして捉えるナラティブ・ベイスド・メディスン(NBM)が重要視されている.コンピュータによる協調作業支援および発想支援の研究として行われてきた知的対話処理システムを応用し,話題構造の可視化による医師-患者コミュニケーション支援手法の開発を試みたのでここに報告する.一般診療におけるNBMの実践のプロセスを斎藤は,(1)患者の病いの体験の物語りの聴取プロセス,(2)共有のプロセス,(3)医師の物語りの進展のプロセス,(4)物語りのすり合わせと新しい物語りの浮上のプロセス,(5)医療の評価のプロセス,と位置づけている...

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Published in医療情報学 Vol. 24; no. 6; pp. 579 - 587
Main Authors 勝山, 貴美子, 神山, 祐一, 平野, 靖, 間瀬, 健二, 山内, 一信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本医療情報学会 2004
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Summary:慢性疾患の増加に伴う疾病構造の変化に伴い,病気を科学的な視点で捉えるだけでなく,病いとして捉えるナラティブ・ベイスド・メディスン(NBM)が重要視されている.コンピュータによる協調作業支援および発想支援の研究として行われてきた知的対話処理システムを応用し,話題構造の可視化による医師-患者コミュニケーション支援手法の開発を試みたのでここに報告する.一般診療におけるNBMの実践のプロセスを斎藤は,(1)患者の病いの体験の物語りの聴取プロセス,(2)共有のプロセス,(3)医師の物語りの進展のプロセス,(4)物語りのすり合わせと新しい物語りの浮上のプロセス,(5)医療の評価のプロセス,と位置づけている.第一段階として,斎藤のプロセスを参考に,一般診療における医師-患者間の話題の関係を可視化するシステムの構築を試みた.第二段階として,以下の3段階の手順を踏んで話題構造を可視化した.手順1)原文を医師と患者の発言に分けた後,それぞれ独立に話題境界を指定し,それぞれの話題のまとまりを,医師はTOD 1,2・・,患者はTOP 1,2・・とブロック化し,これをテキストオブジェクトとした.手順2)各テキストオブジェクトの話題を表す特徴ベクトルを構成し,すべての組み合わせについて,特徴ベクトルの内積をとることで,テキストオブジェクト間の話題の類似性を算出した.手順3)話題と話題間の類似度を時系列に並べて可視化した.第三段階で,このシステムの効果と有用性について,文献と実際の診療場面における医師と患者の会話分析を行い,良好な結果を得た.
ISSN:0289-8055
2188-8469
DOI:10.14948/jami.24.579