非弾性衝突に関する誤概念とその修正方略の事例的研究
本研究では,衝突現象の中でも身近な「球体と壁との非弾性衝突」に関する誤概念について,その抽出と修正方略の検討・実践を試みた。まず,球体の運動方向と壁とのなす角度(衝突角度,はね返り角度),及び球体の速さについて,衝突前後の変化を尋ねる誤概念調査(事前調査)を実施し,当該現象に関する誤概念を抽出した。その結果を踏まえ,誤概念から科学的概念への概念修正を促すべく,誤概念の明確化と誤概念の獲得過程の明確化の両アプローチからなるメタ認知的支援を実施した。誤概念の明確化では,事前調査で問うた状況を再現する実験,すなわち,球体を壁と斜めに非弾性衝突させ,誤概念の反証的事実に直面させる実験を実施した。また,...
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Published in | 理科教育学研究 Vol. 59; no. 3; pp. 423 - 430 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本理科教育学会
25.03.2019
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Subjects | |
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ISSN | 1345-2614 2187-509X |
DOI | 10.11639/sjst.18037 |
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Summary: | 本研究では,衝突現象の中でも身近な「球体と壁との非弾性衝突」に関する誤概念について,その抽出と修正方略の検討・実践を試みた。まず,球体の運動方向と壁とのなす角度(衝突角度,はね返り角度),及び球体の速さについて,衝突前後の変化を尋ねる誤概念調査(事前調査)を実施し,当該現象に関する誤概念を抽出した。その結果を踏まえ,誤概念から科学的概念への概念修正を促すべく,誤概念の明確化と誤概念の獲得過程の明確化の両アプローチからなるメタ認知的支援を実施した。誤概念の明確化では,事前調査で問うた状況を再現する実験,すなわち,球体を壁と斜めに非弾性衝突させ,誤概念の反証的事実に直面させる実験を実施した。また,誤概念の獲得過程の明確化には,誤概念獲得に繋がり得る原因事象を想起・議論させる班内討議を実施した。そして,メタ認知的支援実施後の誤概念修正状況を確認するため,事前調査同様の事後,及び遅延調査を実施した。本研究の結果,球体と壁との非弾性衝突に関する考え方として,斜め衝突では「衝突角度とはね返り角度は等しい」とする誤概念を抽出することができた。そして,当該誤概念の原因事象として,学業経験要因,観察経験要因,デジタル視聴経験要因の3要因の存在が示された。また,メタ認知的支援の結果,著しい誤概念修正が達成されることも確認できた。 |
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ISSN: | 1345-2614 2187-509X |
DOI: | 10.11639/sjst.18037 |