急性脳症と鑑別を要した乳児ボツリヌス症の一例
乳児ボツリヌス症はボツリヌス菌の毒素により全身の神経麻痺を呈する疾患である。 脳神経麻痺や呼吸障害など頭蓋内疾患と似た症状を呈し,遭遇機会も少なく重症例や非典型例では見逃されている可能性がある。症例は7か月女児,発熱と活気不良を主訴に当院に紹介された。来院時より刺激にほぼ反応がない昏睡様症状を認め,無呼吸が頻発した。脳波上の徐波とノロウイルス抗原検査が陽性であったため,当初は急性脳症と診断しステロイド短期大量療法を含む神経集中治療を行ったが,鎮静薬中止後も脳神経麻痺や昏睡様症状が遷延した。頭部MRIや髄液検査は異常なく,脳波検査では日内変動や刺激への反応を認めたため,神経筋接合部疾患を鑑別に挙...
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Published in | 日本集中治療医学会雑誌 Vol. 29; no. 5; pp. 519 - 522 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本集中治療医学会
01.09.2022
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Summary: | 乳児ボツリヌス症はボツリヌス菌の毒素により全身の神経麻痺を呈する疾患である。 脳神経麻痺や呼吸障害など頭蓋内疾患と似た症状を呈し,遭遇機会も少なく重症例や非典型例では見逃されている可能性がある。症例は7か月女児,発熱と活気不良を主訴に当院に紹介された。来院時より刺激にほぼ反応がない昏睡様症状を認め,無呼吸が頻発した。脳波上の徐波とノロウイルス抗原検査が陽性であったため,当初は急性脳症と診断しステロイド短期大量療法を含む神経集中治療を行ったが,鎮静薬中止後も脳神経麻痺や昏睡様症状が遷延した。頭部MRIや髄液検査は異常なく,脳波検査では日内変動や刺激への反応を認めたため,神経筋接合部疾患を鑑別に挙げた。マウス試験で血液・便からボツリヌス毒素が検出され,乳児ボツリヌス症と診断した。気管切開術を実施し,約1か月後に人工呼吸器を離脱した。原因不明の脳神経麻痺や昏睡様症状を呈す乳児では常に本疾患を鑑別すべきである。 |
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ISSN: | 1340-7988 1882-966X |
DOI: | 10.3918/jsicm.29_519 |