大気粉じん中の鉛やその同位体比を用いた長距離輸送を含む起源解明ならびに微量元素の発生源に関する研究

大気粉じんにどのような元素が含まれるかという科学的な評価は重要な課題である。特に日本の粉じんは大陸から輸送された成分を含んでおり、長距離輸送を含めた大気粉じんの元素の評価や理解が重要である。ここでは、長年行ってきた隠岐島での大気観測を基に、Pbの特徴をPb/Zn比や同位体比とアジアの国々からの長距離輸送との関係を整理した。特に、中国からの影響について、現場のデータと比較しつつ鉛同位体比をトレーサーとして評価しその利用が1990–2000年代初期で有効であったことを示した。一方、2000年以降中国のPb/Zn比や鉛同位体比、また長距離輸送観測時のそれらの特徴が変化してきたため、特に鉛同位体比の地...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in大気環境学会誌 Vol. 59; no. 1; pp. 8 - 22
Main Author 向井, 人史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 大気環境学会 10.01.2024
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:大気粉じんにどのような元素が含まれるかという科学的な評価は重要な課題である。特に日本の粉じんは大陸から輸送された成分を含んでおり、長距離輸送を含めた大気粉じんの元素の評価や理解が重要である。ここでは、長年行ってきた隠岐島での大気観測を基に、Pbの特徴をPb/Zn比や同位体比とアジアの国々からの長距離輸送との関係を整理した。特に、中国からの影響について、現場のデータと比較しつつ鉛同位体比をトレーサーとして評価しその利用が1990–2000年代初期で有効であったことを示した。一方、2000年以降中国のPb/Zn比や鉛同位体比、また長距離輸送観測時のそれらの特徴が変化してきたため、特に鉛同位体比の地域特性を再整理した。それによると、近年の中国はかつてのような高い207Pb/206Pb比を示さず、全体的に日本に近い値にシフトしてきていた。一方208Pb/206Pb比は変わらず相対的に高い傾向を持っており過去の評価は有効であった。しかし中国(特に夏季)や、韓国由来の鉛同位体比には90年代になかった低い207Pb/206Pb比、208Pb/206Pb比が現れ、長距離輸送の新しい特徴としての理解が必要であった。今後の長距離輸送研究に役立てるべく近隣諸国の鉛同位体比の特徴を新たな図として提案した。その他、研究した興味深い微量元素について現在の中国のデータと関連し紹介した。
ISSN:1341-4178
2185-4335
DOI:10.11298/taiki.59.8