他症状に加味帰脾湯を投与中に疲労時の歯肉出血にも奏効した脾不統血症例

疲労時に歯周病が悪化,急性増悪するということは経験的に知られているが,疲労と出血の因果関係について科学的検証はなされていない。東洋医学においては,疲労時の出血として脾不統血という概念があり,帰脾湯,加味帰脾湯が代表方剤とされてきた。加味帰脾湯は特発性血小板減少性紫斑病,婦人科不正出血,再生不良性貧血,血痰などに関する報告などがあるが,歯肉出血の報告はない。本症例の主訴は倦怠感,頭痛,めまい,胸のざわざわ感であった。治療経過中に心脾両虚と考えて加味帰脾湯7.5g を開始したところ,主訴に加えて初診時には訴えていなかった疲労時の歯肉出血も消失した。血球減少,明らかな凝固異常を指摘されていないため,...

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Published in日本東洋医学雑誌 Vol. 68; no. 3; pp. 218 - 221
Main Authors 玉嶋, 貞宏, 加藤, 憲忠, 奈良, 和彦, 田中, 耕一郎, 高橋, 浩子, 新美, 知子, 千葉, 浩輝, 大谷, 知穂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本東洋医学会 2017
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ISSN0287-4857
1882-756X
DOI10.3937/kampomed.68.218

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Summary:疲労時に歯周病が悪化,急性増悪するということは経験的に知られているが,疲労と出血の因果関係について科学的検証はなされていない。東洋医学においては,疲労時の出血として脾不統血という概念があり,帰脾湯,加味帰脾湯が代表方剤とされてきた。加味帰脾湯は特発性血小板減少性紫斑病,婦人科不正出血,再生不良性貧血,血痰などに関する報告などがあるが,歯肉出血の報告はない。本症例の主訴は倦怠感,頭痛,めまい,胸のざわざわ感であった。治療経過中に心脾両虚と考えて加味帰脾湯7.5g を開始したところ,主訴に加えて初診時には訴えていなかった疲労時の歯肉出血も消失した。血球減少,明らかな凝固異常を指摘されていないため,原因として血瘀,血熱,脾不統血などが挙げられるが,加味帰脾湯が有効であったことから,脾不統血の存在を否定できないと考えられた。疲労時の歯肉出血に対し加味帰脾湯は選択肢となりうると考えられる。
ISSN:0287-4857
1882-756X
DOI:10.3937/kampomed.68.218