レセプターモデルを用いたPM2.5への打上花火イベントの影響事例評価

奈良県内でおこなわれた花火イベントが大気中のPM2.5濃度に及ぼした影響を評価するため、2014–2017年度のPM2.5の成分分析測定データの解析をおこなった。解析には特定のPM2.5固定発生源が付近に存在せず、濃度変動が類似している奈良盆地内2地点の測定結果を用いた。この2地点での同一測定日のPM2.5成分濃度の相関係数は、Srのみ著しく低い値を示した。Srが特に高濃度であった4測定日を除外し、各化学成分の相関係数を求めたところ、Srは0.14から0.65に、K+、Ba、Cu、Mg2+についても上昇した。これらは花火の薬剤含有成分であり、Srの高濃度日は花火の影響を受けたと考えられた。また...

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Published in大気環境学会誌 Vol. 56; no. 3; pp. 43 - 56
Main Authors 山本, 真緒, 浦西, 克維, 菅田, 誠治, 菊谷, 有希
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 大気環境学会 31.03.2021
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ISSN1341-4178
2185-4335
DOI10.11298/taiki.56.43

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Summary:奈良県内でおこなわれた花火イベントが大気中のPM2.5濃度に及ぼした影響を評価するため、2014–2017年度のPM2.5の成分分析測定データの解析をおこなった。解析には特定のPM2.5固定発生源が付近に存在せず、濃度変動が類似している奈良盆地内2地点の測定結果を用いた。この2地点での同一測定日のPM2.5成分濃度の相関係数は、Srのみ著しく低い値を示した。Srが特に高濃度であった4測定日を除外し、各化学成分の相関係数を求めたところ、Srは0.14から0.65に、K+、Ba、Cu、Mg2+についても上昇した。これらは花火の薬剤含有成分であり、Srの高濃度日は花火の影響を受けたと考えられた。また、Sr/Ti比を用いることで花火の影響を受けた日を推定できることを明らかにした。次に、花火イベントによる大気中のPM2.5濃度への寄与を推定するため、PMFモデルによる発生源寄与解析を実施した。その結果、Sr、Ba、Cu、K+等を構成成分とする花火由来と解釈される因子が抽出された。観測期間中で花火因子の影響が最大となった2017/10/26では、PM2.5日平均値に対する寄与割合が17.8%(寄与濃度3.8 µg/m3)と推算された。花火からの大気汚染物質の放出は一日のごく短時間に集中することから、PM2.5成分濃度の一時間値に対する影響についても今後、検証していく必要がある。
ISSN:1341-4178
2185-4335
DOI:10.11298/taiki.56.43