臓器移植領域における分子状水素の臨床応用に向けて ~“利点を生かし,難点を減らす”ための応用戦略

分子状水素(H2)は, 有害な活性酸素種を選択的に中和し, 無害な水分子へと変える特筆すべき特性を持つが, その臨床応用に向けては, 可燃性, 高拡散性/透過性, 低溶解度など解決すべき複数の障壁がある. 我々は, その“利点を生かし 難点を減ずる”工夫, すなわちH2の新たなDelivery SystemとしてHyFACS法を考案した. HyFACS法(Hydrogen Flush After Cold Storage)とは, 移植臓器が必ず一度は体外環境を経ることを利用して, 移植直前(保存終了時)に, 体外で, 飽和濃度以下の水素水を, 移植臓器の血管内に直接注入するだけのシンプルな再灌...

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Published inOrgan Biology Vol. 27; no. 2; pp. 133 - 140
Main Authors 秦, 浩一郎, 玉木, 一路, 宮内, 英孝, 田嶋, 哲也, 日下部, 治郎, 趙, 向東, 岡村, 裕輔, 上本, 伸二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臓器保存生物医学会 2020
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Summary:分子状水素(H2)は, 有害な活性酸素種を選択的に中和し, 無害な水分子へと変える特筆すべき特性を持つが, その臨床応用に向けては, 可燃性, 高拡散性/透過性, 低溶解度など解決すべき複数の障壁がある. 我々は, その“利点を生かし 難点を減ずる”工夫, すなわちH2の新たなDelivery SystemとしてHyFACS法を考案した. HyFACS法(Hydrogen Flush After Cold Storage)とは, 移植臓器が必ず一度は体外環境を経ることを利用して, 移植直前(保存終了時)に, 体外で, 飽和濃度以下の水素水を, 移植臓器の血管内に直接注入するだけのシンプルな再灌流前処置である. 本稿では, H2の臓器移植領域への基礎研究成果をレビューしながら, 固形臓器移植における本法の利点を概説する.
ISSN:1340-5152
2188-0204
DOI:10.11378/organbio.27.133