音列の数え上げ検査の聴覚心理学的研究とその臨床聴覚検査への応用

聴覚機構における時間因子の処理は, 主として大脳皮質聴覚野を含めた聴覚中枢が関与していると考えられている. そして, 刺激音列を構成する短音を数え上げる過程においては, 時系列の刺激提示速度が速くなるにつれて, その数判断は提示された数よりも少なくなることが確認されている. 今回, 時間因子を利用した「音列の数え上げ検査」を独自に製作し, 6名の脳血管障害患者と4名の感音性難聴患者に施行し, 正常者と比較検討した. 提示する刺激音列の速度を1回/秒 (刺激提示速度; SOA, にて1000ms) から徐々に速くし, その提示された数を答えさせた. 正常者にて正答率が90%以上得られた6回/秒...

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Published in耳鼻と臨床 Vol. 41; no. 4; pp. 630 - 644
Main Author 山崎, 恵三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻と臨床会 1995
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ISSN0447-7227
2185-1034
DOI10.11334/jibi1954.41.4_630

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Summary:聴覚機構における時間因子の処理は, 主として大脳皮質聴覚野を含めた聴覚中枢が関与していると考えられている. そして, 刺激音列を構成する短音を数え上げる過程においては, 時系列の刺激提示速度が速くなるにつれて, その数判断は提示された数よりも少なくなることが確認されている. 今回, 時間因子を利用した「音列の数え上げ検査」を独自に製作し, 6名の脳血管障害患者と4名の感音性難聴患者に施行し, 正常者と比較検討した. 提示する刺激音列の速度を1回/秒 (刺激提示速度; SOA, にて1000ms) から徐々に速くし, その提示された数を答えさせた. 正常者にて正答率が90%以上得られた6回/秒 (SOAにて167ms) より遅い提示速度, SOAで250, 500, 1000msの計4種類の検査音列を被験者 (含患者) に使用した. 脳血管障害患者5例/6名 (83%) において著しく正答率が低下する限界速度が存在した. 残りは正常者とよく似た正答率を呈し, この症例だけはCT像でも側頭葉の傷害所見が明確でなかつた. また4名の感音性難聴患者は正常者と同じく, SOAにて167msより遅い提示速度では90%以上の正答率を得た. 以上の結果から, 中枢性難聴者 (脳血管障害による) と感音性難聴者を区別する上でも, 側頭葉の傷害程度を把握する上でも, この「音列の数え上げ検査」が臨床診断に応用できると考えた.
ISSN:0447-7227
2185-1034
DOI:10.11334/jibi1954.41.4_630