夏季の太平洋高気圧条件下における高濃度PM2.5に対する火山の寄与解析

2018年7月16日から21日にかけて、九州・山陰・瀬戸内・北陸地方の複数の地点で、日平均値が50 μg/m3を超える高濃度PM2.5が観測された。大気エアロゾル化学成分連続自動分析装置による成分測定および化学輸送モデルCommunity Multi-scale Air Quality(以下、CMAQ)によるシミュレーションの結果、PM2.5の主成分はSO42−であり、SO42−は九州西方海上で濃度が上昇し、その後太平洋高気圧の縁辺流に沿って対馬海峡、山陰沖を通り、高濃度を維持したまま日本海(佐渡島付近)まで輸送されていたことがわかった。海上の汚染気塊は、日中の海風により山陰・北陸地方へ流入し...

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Published in大気環境学会誌 Vol. 55; no. 4; pp. 169 - 180
Main Authors 山村, 由貴, 新谷, 俊二, 力, 寿雄, 中川, 修平, 王, 哲, 鵜野, 伊津志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 大気環境学会 10.07.2020
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Summary:2018年7月16日から21日にかけて、九州・山陰・瀬戸内・北陸地方の複数の地点で、日平均値が50 μg/m3を超える高濃度PM2.5が観測された。大気エアロゾル化学成分連続自動分析装置による成分測定および化学輸送モデルCommunity Multi-scale Air Quality(以下、CMAQ)によるシミュレーションの結果、PM2.5の主成分はSO42−であり、SO42−は九州西方海上で濃度が上昇し、その後太平洋高気圧の縁辺流に沿って対馬海峡、山陰沖を通り、高濃度を維持したまま日本海(佐渡島付近)まで輸送されていたことがわかった。海上の汚染気塊は、日中の海風により山陰・北陸地方へ流入していた。前方流跡線およびCMAQのProcess analysisによる解析の結果、桜島火山から噴出したSO2が九州西方海上へ移流し、液相・気相反応によってSO42−を生成していたことが明らかとなった。一方、日本海上のSO42−は、気相反応による生成もわずかにあるが、水平移流・拡散によって九州西方海上から輸送されたものが主であった。以上から、本研究によって、夏季の太平洋高気圧条件下では、桜島火山から噴出したSO2および生成したSO42-が九州西方海上を経由して日本海上を輸送され、広域にわたる高濃度PM2.5事例を引き起こしたことが新たに明らかになった。
ISSN:1341-4178
2185-4335
DOI:10.11298/taiki.55.169