内視鏡下鼻内手術にて閉鎖しえたSternberg’s canalからの髄液漏症例

鼻性髄液漏は正常構造の破綻により髄液が鼻内に漏出している状態を示し,治療は多くの場合で外科的治療が選択される。今回,治療に難渋した鼻性髄液漏の症例に対し,内視鏡下で瘻孔を閉鎖しえたので報告する。本症例は,他院でSternberg’s canal型髄膜脳瘤術後の鼻性髄液漏に対し,内視鏡下鼻内瘻孔閉鎖術を行うも髄液漏が持続した症例である。受診時,鼻内内視鏡で持続的な水様性鼻漏を認めたが,明らかな瘻孔は同定できず,瘻孔は髄膜脳瘤の手術を行ったSternberg’s canalと推定された。術中所見ではSternberg’s canalの外側縁と考えられた部位が架橋した骨組織であり,その前方外側にも骨...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 65; no. 6; pp. 245 - 250
Main Authors 岡村, 彩加, 佐久間, 信行, 田中, 大貴, 飯村, 慈朗, 中澤, 圭史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.12.2022
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo.65.6_245

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Summary:鼻性髄液漏は正常構造の破綻により髄液が鼻内に漏出している状態を示し,治療は多くの場合で外科的治療が選択される。今回,治療に難渋した鼻性髄液漏の症例に対し,内視鏡下で瘻孔を閉鎖しえたので報告する。本症例は,他院でSternberg’s canal型髄膜脳瘤術後の鼻性髄液漏に対し,内視鏡下鼻内瘻孔閉鎖術を行うも髄液漏が持続した症例である。受診時,鼻内内視鏡で持続的な水様性鼻漏を認めたが,明らかな瘻孔は同定できず,瘻孔は髄膜脳瘤の手術を行ったSternberg’s canalと推定された。術中所見ではSternberg’s canalの外側縁と考えられた部位が架橋した骨組織であり,その前方外側にも骨欠損が続いており,同部位を閉鎖することで髄液漏は停止した。本症例の治療は,瘻孔部位の正確な同定が困難であり,瘻孔部位を可能な限り明視下におく手術アプローチの工夫が必要であった。翼口蓋窩アプローチに加えてEMMMに準じた切開から鼻涙管を温存したうえで,下鼻甲介を離断し上咽頭方向へ偏移し上顎洞内側壁を広く開放した。それによって蝶形骨洞外側の瘻孔に対しても良好な術野の展開および手術操作が可能となった。鼻涙管閉塞の症状も認めず,術後経過は良好である。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo.65.6_245