腎尿細管における尿酸転送機構を検討した低尿酸血症の1例

症例は74歳女性で,右膝関節痛を主訴とし,多関節の腫脹, 変形と疼痛の精査を求めて来院,血清生化学検査で血清尿酸値が0.8mg/dlと異常低値を示した.本例の血清オキシプリン濃度はヒポキサンチン11.6μmol/l,キサンチン15μmol/で,いずれも増加を認めなかった.尿酸クリアランス試験ならびにpyrazinamideとbenzbromaroneの負荷試験を行い,Four componenttheoryに準拠した計算法により腎尿細管における尿酸の転送係数および転送量を算出したところ,尿酸クリアランス値は44.1ml/minと異常高値を示したが,尿酸排泄量は0.41mg/kg/hrと正常域に...

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Published in痛風と核酸代謝 Vol. 27; no. 2; pp. 119 - 124
Main Authors 山下, 太郎, 田中, 経雄, 津谷, 寛, 中村, 徹, 仁科, 甫啓, 高木, 和貴, 金森, 範夫, 上田, 孝典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会 2003
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ISSN1344-9796
2186-6368
DOI10.6032/gnam1999.27.2_119

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Summary:症例は74歳女性で,右膝関節痛を主訴とし,多関節の腫脹, 変形と疼痛の精査を求めて来院,血清生化学検査で血清尿酸値が0.8mg/dlと異常低値を示した.本例の血清オキシプリン濃度はヒポキサンチン11.6μmol/l,キサンチン15μmol/で,いずれも増加を認めなかった.尿酸クリアランス試験ならびにpyrazinamideとbenzbromaroneの負荷試験を行い,Four componenttheoryに準拠した計算法により腎尿細管における尿酸の転送係数および転送量を算出したところ,尿酸クリアランス値は44.1ml/minと異常高値を示したが,尿酸排泄量は0.41mg/kg/hrと正常域にあり,腎尿細管における尿酸転送係数は分泌前再吸収率0.899(対照:0.961±0.030),分泌率95.2(対照: 65.8±15.0)ml/min , 分泌後再吸収率0.573 (対照: 0.882±0.019) とそれぞれ算出された.尿酸転送量は糸球体濾過量674(対照:7110±711)μg/min,分泌前再吸収量606(対照:6840±786)μg/min,分泌量810(対照:3710±935)μg/min,分泌後再吸収量503(対照:3530±711)μg/min,尿中排泄量375(対照:462±112)μ9/minであった.以上の成績より本症例における血清尿酸値の低下の機序は尿酸の排泄率亢進によるもので, その原因は尿細管における尿酸分泌率の異常上昇と分泌後再吸収率の異常低下によると推論される.
ISSN:1344-9796
2186-6368
DOI:10.6032/gnam1999.27.2_119