ガス・粒子状物質の乾性沈着および大気–地表面交換に関する研究
地表面へ沈着した大気汚染物質が生態系へ与える影響を評価する際、これらの物質の大気沈着量を精度よく推計することが重要となる。湿性沈着に比べて乾性沈着は、その量を把握することが難しく推計精度における不確実性は未だに大きい。本総説では筆者が取り組んできたフラックス観測による乾性沈着あるいは大気–地表面交換メカニズム、および乾性沈着推定法による大気沈着量評価に関する研究について、世界的な研究の動向とともに概観した。ここで紹介したフラックス観測は2002年から2021年にかけて、オゾン、二酸化硫黄、PM2.5硫酸塩、PM2.5硝酸塩、硝酸ガス、アンモニアを順次対象としたものである。フラックス測定手法は濃...
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Published in | 大気環境学会誌 Vol. 59; no. 2; pp. 23 - 29 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 大気環境学会
22.02.2024
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Summary: | 地表面へ沈着した大気汚染物質が生態系へ与える影響を評価する際、これらの物質の大気沈着量を精度よく推計することが重要となる。湿性沈着に比べて乾性沈着は、その量を把握することが難しく推計精度における不確実性は未だに大きい。本総説では筆者が取り組んできたフラックス観測による乾性沈着あるいは大気–地表面交換メカニズム、および乾性沈着推定法による大気沈着量評価に関する研究について、世界的な研究の動向とともに概観した。ここで紹介したフラックス観測は2002年から2021年にかけて、オゾン、二酸化硫黄、PM2.5硫酸塩、PM2.5硝酸塩、硝酸ガス、アンモニアを順次対象としたものである。フラックス測定手法は濃度勾配法と緩和渦集積法を用い、温帯、冷温帯、熱帯に位置する各森林サイトにおいて観測を実施した。窒素成分に関しては農地においても観測を実施した。特に不確実性の大きい森林におけるサブミクロン粒子の沈着速度について、乾性沈着モデルでは考慮されていないいくつかのプロセスに注目して考察するとともに、観測値の不確実性についても議論した。さらに、日本の遠隔域における硫黄および窒素の総沈着量の評価結果を示しつつ、今後の大気沈着研究について考察した。 |
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ISSN: | 1341-4178 2185-4335 |
DOI: | 10.11298/taiki.59.23 |