術者の経験がステンレススチール製手用Kファイルおよびニッケルチタン製ロータリーファイルを用いた根管形成に及ぼす影響

目的:Kファイルおよびニッケルチタン製ロータリーファイル(NiTiファイル)を用いた彎曲根管の根管形成における,エラーの発生頻度,作業時間,根管追従性に対して,術者の経験の違いが及ぼす影響を解析することを目的とした. 材料と方法:NiTiファイルの使用経験のない東京医科歯科大学歯学部歯学科4年生44名と,臨床経験5年以上の東京医科歯科大学歯髄生物学分野の歯科医師12名を術者とし,上部拡大済みのJ字型透明根管模型(作業長17.0mm,彎曲角度45°)に対して,ステンレススチール製手用Kファイルを用いたステップバック形成(Kファイル群),Vortex Blueを用いたクラウンダウン形成(NiTi群...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 68; no. 1; pp. 8 - 15
Main Authors 平野, 恵子, 海老原, 新, 木村, 俊介, 大森, 智史, 興地, 隆史, 雲野, 颯, 牧, 圭一郎, 春日, 柚香
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 28.02.2025
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.68.8

Cover

More Information
Summary:目的:Kファイルおよびニッケルチタン製ロータリーファイル(NiTiファイル)を用いた彎曲根管の根管形成における,エラーの発生頻度,作業時間,根管追従性に対して,術者の経験の違いが及ぼす影響を解析することを目的とした. 材料と方法:NiTiファイルの使用経験のない東京医科歯科大学歯学部歯学科4年生44名と,臨床経験5年以上の東京医科歯科大学歯髄生物学分野の歯科医師12名を術者とし,上部拡大済みのJ字型透明根管模型(作業長17.0mm,彎曲角度45°)に対して,ステンレススチール製手用Kファイルを用いたステップバック形成(Kファイル群),Vortex Blueを用いたクラウンダウン形成(NiTi群)を行った.Kファイル群では,根尖部を#25まで拡大後,1mmごとのステップバック形成を#50まで行った.NiTi群では,根管形成用モーター(X–Smart Plus)を用い,#30/0.06,#25/0.06,#20/0.06の順にクラウンダウン法で根尖まで形成した後#25/0.06まで拡大した.レッジ形成などのエラーの発生頻度,作業時間,根管追従性(centering ratio)の3つの観点で根管形成の評価を行った. 結果:エラーの発生頻度は,Kファイル群では学生で28根管(レッジ形成25根管,ファイル破折2根管,アンダー形成1根管)に生じ,経験者の1根管(レッジ形成1根管)と比較し有意に高かった(p<0.05).NiTi群では,学生でアンダー形成が1根管生じたが,経験者ではエラーは生じず,術者の違いによる有意差は認めなかった. 作業時間は,Kファイル群,NiTi群とも経験者が学生と比較して有意に短かった(p<0.05).学生ではNiTi群がKファイル群より有意に短かった(p<0.05)が,経験者では両器具間で有意差を認めなかった.Centering ratioは,両群ともすべての測定点で,経験者が学生と比較して有意に小さい値となり,根管の偏位が少ないことが示された(p<0.05). 結論:彎曲根管の形成におけるエラーの発生頻度は,Kファイルでは学生と比較して経験者が有意に低かったが,NiTiファイルでは経験による差は認められなかった.作業時間および根管追従性に関しては,両器具とも経験者が有意に良好な成績を示した.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.68.8