宝石サンゴ骨格への海水中のフッ化物イオンの共沈

宝石サンゴ骨格中(マグネシウム方解石)のMg/Ca比は約0.1 mol/molであり,浅海産の生物殻(マグネシウム方解石)中のF/Ca比よりも大きな値を示した.サンゴ骨格内の炭酸イオン1個が2個のフッ化物イオンによって交換されるとすると,このイオン交換反応の見かけの平衡定数KF'は,KF'=[(Ca, Mg)F2] [CO32-]/[CaCO3] [F-]2となる.F/Ca比について整理すると,[(Ca, Mg)F2]/[CaCO3]=KF'[F-]2/[CO32-] となる.したがって,宝石サンゴ骨格中に共沈するフッ素含量は,炭酸イオン濃度に反比例することになる...

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Published in日本海水学会誌 Vol. 64; no. 4; pp. 225 - 228
Main Authors 漢那, 直也, 田中, 健太郎, 小野, 朋典, 大出, 茂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本海水学会 01.08.2010
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Summary:宝石サンゴ骨格中(マグネシウム方解石)のMg/Ca比は約0.1 mol/molであり,浅海産の生物殻(マグネシウム方解石)中のF/Ca比よりも大きな値を示した.サンゴ骨格内の炭酸イオン1個が2個のフッ化物イオンによって交換されるとすると,このイオン交換反応の見かけの平衡定数KF'は,KF'=[(Ca, Mg)F2] [CO32-]/[CaCO3] [F-]2となる.F/Ca比について整理すると,[(Ca, Mg)F2]/[CaCO3]=KF'[F-]2/[CO32-] となる.したがって,宝石サンゴ骨格中に共沈するフッ素含量は,炭酸イオン濃度に反比例することになる.水深の増加に伴い,海水中の炭酸イオン濃度は減少するので,宝石サンゴ骨格(マグネシウム方解石)中のフッ素含量は,Mg/Ca比が約0.1 mol/molのとき,浅海に生息する生物殻(マグネシウム方解石)と比較して大きくなることが示唆される.
ISSN:0369-4550
2185-9213
DOI:10.11457/swsj.64.225