自動運転の社会実装の際に議論すべき法的課題

自動運転技術のレベル4(L4)の実用化が近づく中、関連する法的問題の検討が急務となっている。L4で走行する車両では、その乗員は当該車両の運転者ではないが、車両外からその挙動を遠隔操作する者を運転者と認定できるか、その場合、運転者は如何なる義務を負うのかは、解明されていない。L4でも、交通事故は起こり得る。例えば、L4で走行中の車両が、予期せぬ挙動をして自車に向かってきた対向車との衝突を避けるため、進路を変更した結果、歩行者に自車を衝突させて死亡させることも、起こり得る。この場合、誰が(刑事)法的責任を負うのか。自動運転を制御するアルゴリズム作成者か、自動車販売会社か、乗員か。これらの問題の法的...

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Published in学術の動向 Vol. 27; no. 7; pp. 7_27 - 7_32
Main Author 今井, 猛嘉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本学術協力財団 01.07.2022
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ISSN1342-3363
1884-7080
DOI10.5363/tits.27.7_27

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Summary:自動運転技術のレベル4(L4)の実用化が近づく中、関連する法的問題の検討が急務となっている。L4で走行する車両では、その乗員は当該車両の運転者ではないが、車両外からその挙動を遠隔操作する者を運転者と認定できるか、その場合、運転者は如何なる義務を負うのかは、解明されていない。L4でも、交通事故は起こり得る。例えば、L4で走行中の車両が、予期せぬ挙動をして自車に向かってきた対向車との衝突を避けるため、進路を変更した結果、歩行者に自車を衝突させて死亡させることも、起こり得る。この場合、誰が(刑事)法的責任を負うのか。自動運転を制御するアルゴリズム作成者か、自動車販売会社か、乗員か。これらの問題の法的解決策を示さない限り、自動運転車の社会的受容性は確保されない。この検討に際しては、様々な倫理観が併存すること、特定の倫理観の強制は法律の守備範囲を超えることを踏まえつつ、事故に起因する損害の社会的最小化が求められる。
ISSN:1342-3363
1884-7080
DOI:10.5363/tits.27.7_27