大気中アンモニア濃度の急増イベント―雨滴や露の蒸発との関係

大気中のガス状NH3と粒子状NH4+濃度について、名古屋大学構内で20日間程度の連続観測を2011年11月から2016年1月にかけて7回行った。この中で、降雨後に湿度が低下すると同時にNH3濃度が高くなる現象がごくまれに観測された。本研究では、ピーク濃度が680 nmol/m3に達した2015年12月11日の短時間急増イベントについて、気象要素や雨水のイオン成分との関係も含めて、急増をもたらした要因を考察した。12月11日の雨水のイオン成分としては、海塩成分濃度やCa2+濃度が高く、pHは5.6程度であった。このため、水分の蒸発により雨水中のNH4+が揮発可能な条件であった。同時に、12月10...

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Published in大気環境学会誌 Vol. 53; no. 4; pp. 130 - 135
Main Authors 池盛, 文数, 三輪, 篤, 久恒, 邦裕, 長田, 和雄, 中島, 寛則, 山神, 真紀子, 藪谷, 翔輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 大気環境学会 10.07.2018
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ISSN1341-4178
2185-4335
DOI10.11298/taiki.53.130

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Summary:大気中のガス状NH3と粒子状NH4+濃度について、名古屋大学構内で20日間程度の連続観測を2011年11月から2016年1月にかけて7回行った。この中で、降雨後に湿度が低下すると同時にNH3濃度が高くなる現象がごくまれに観測された。本研究では、ピーク濃度が680 nmol/m3に達した2015年12月11日の短時間急増イベントについて、気象要素や雨水のイオン成分との関係も含めて、急増をもたらした要因を考察した。12月11日の雨水のイオン成分としては、海塩成分濃度やCa2+濃度が高く、pHは5.6程度であった。このため、水分の蒸発により雨水中のNH4+が揮発可能な条件であった。同時に、12月10日夜から11日朝にかけての暖気の流入により、建物の外側の壁面などに露が形成される気象条件であった。しかも、露が形成される際に大気中NH3濃度が高かったので、高NH4+濃度の露が形成されていたと考えられる。降雨後の湿度低下に伴う水分の蒸発時に、これらの雨水や露からNH3が揮発したために、大気中NH3濃度が急上昇したと考えられる。
ISSN:1341-4178
2185-4335
DOI:10.11298/taiki.53.130