機能性糖脂質ビザンチンによるStreptococcus mutansの付着抑制効果 表面性状の変化と付着関連遺伝子の発現解析

目的 : 硫酸化ビザンチン (Viz-S) は, 50μmol/lではStreptococcus mutansバイオフィルムを易剝離性に変化させ, 75μmol/lでは付着を抑制する. 本研究では, 75μmol/l Viz-Sの付着抑制機序を解明するため, 同菌の表面性状の変化および付着関連遺伝子の転写量の変化について解析した. 材料と方法 :  実験1 (菌体表面性状の解析) ; S. mutans UA159株 (UA159) のPBS懸濁液1 mlに, Viz-Sを終濃度が0, 50, 75μmol/lとなるように添加した. 10分間作用させたのち, n-ヘキサデカン200μlを添加し...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 63; no. 2; pp. 173 - 180
Main Authors 小田, 真隆, 野杁, 由一郎, 永田, 量子, 長谷川, 泰輔, 鈴木, 裕希, 大墨, 竜也, 山本, 博文, 竹中, 彰治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 30.04.2020
日本歯科保存学会
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.63.173

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Summary:目的 : 硫酸化ビザンチン (Viz-S) は, 50μmol/lではStreptococcus mutansバイオフィルムを易剝離性に変化させ, 75μmol/lでは付着を抑制する. 本研究では, 75μmol/l Viz-Sの付着抑制機序を解明するため, 同菌の表面性状の変化および付着関連遺伝子の転写量の変化について解析した. 材料と方法 :  実験1 (菌体表面性状の解析) ; S. mutans UA159株 (UA159) のPBS懸濁液1 mlに, Viz-Sを終濃度が0, 50, 75μmol/lとなるように添加した. 10分間作用させたのち, n-ヘキサデカン200μlを添加し1分間攪拌した. 15分間静置後, 疎水性率をMicrobial adhesion to hydrocarbon testにより評価した. 実験2 (Viz-S処理したS. mutansの付着抑制効果) ; 0.2, 0.4, 0.8, 1.6%スクロース含有BHI液体培地に, 終濃度が0, 50, 75μmol/lとなるようにViz-Sを添加した. 緑色蛍光タンパク質を導入したS. mutans変異株 (ZsG) を, OD600=0.025となるように培地に加えた. 唾液処理したカバーガラスチェンバー内に細菌懸濁液を送り込み, 1時間静置後の付着細菌の割合を, 共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析した. 実験3 (遺伝子発現動態の解析) ; 0, 50, 75μmol/lのViz-S存在下で4時間培養後のUA159を回収し, mRNAを抽出後, cDNAを合成した. 付着関連遺伝子の転写量をReal-time PCR法で解析した. 成績 : コントロール群の菌体表層の疎水性率 (%±SD) は57.5±13.4であった. 50μmol/lおよび75μmol/lのViz-S存在下では疎水性率が低下し, それぞれ, 29.4±10.4 (p<0.05), 14.9±7.0 (p<0.01) であった. 50μmol/lおよび75μmol/l Viz-S群のZsGの付着面積は, コントロール群と比較して, それぞれ1/8~1/10 (50μmol/l Viz-S群) および1/40~1/55 (75μmol/l Viz-S群) に減少した. gtfDの転写は, すべてのスクロース含有条件でコントロール群と比較して, それぞれ0.38~0.5倍 (50μmol/l Viz-S群) および0.33~0.36倍 (75μmol/l Viz-S群) に有意に低下した (p<0.05). 菌体表層タンパクをエンコードする遺伝子群の転写には有意な変化はなかった. 結論 : 50μmol/lおよび75μmol/lのViz-Sは, S. mutansの菌体表層に結合することで, 表面性状を親水性に変化させた. また, スクロース依存性の付着に重要なgtfDの転写を低下させた. 75μmol/lのViz-Sは, これらの2つの機序によりS. mutansに対して付着抑制効果を示すと考えられた.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.63.173