里山の指標種ワレモコウの遺伝的変異

ワレモコウ (Sanguisorba officinalis) は,里山の半自然草地を主たる生育地とするバラ科の多年生草本である。このような里山の草原性植物は,弥生時代以降,刈取や火入れといった人為的攪乱に乗じて生育範囲を拡大させてきたといわれている。本研究では,こうした歴史が本種の遺伝的変異のパターンに影響を与えたのではないかとの仮説をたて,検証を試みた。全国から 179個体のワレモコウの葉を採集し,葉緑体 DNA の地理的変異を解析した。その結果,17 種類のハプロタイプが検出されたが,ハプロタイプの分布には強い地理的なまとまりがみられなかった。SAMOVA によって遺伝的境界の探索を行う...

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Published in日本緑化工学会誌 Vol. 38; no. 1; pp. 115 - 120
Main Authors 佐伯, いく代, 平塚, 和之, 小池, 文人, 飯田, 晋也, 小林, 慶子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本緑化工学会 2012
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ISSN0916-7439
0916-7439
DOI10.7211/jjsrt.38.115

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Summary:ワレモコウ (Sanguisorba officinalis) は,里山の半自然草地を主たる生育地とするバラ科の多年生草本である。このような里山の草原性植物は,弥生時代以降,刈取や火入れといった人為的攪乱に乗じて生育範囲を拡大させてきたといわれている。本研究では,こうした歴史が本種の遺伝的変異のパターンに影響を与えたのではないかとの仮説をたて,検証を試みた。全国から 179個体のワレモコウの葉を採集し,葉緑体 DNA の地理的変異を解析した。その結果,17 種類のハプロタイプが検出されたが,ハプロタイプの分布には強い地理的なまとまりがみられなかった。SAMOVA によって遺伝的境界の探索を行うと,グループ数を 6 としたときに Fct 値 (0.55) がプラトーに達した。このときに同一のグループに分類された集団の中には飛び地になっているものがみられ,複数のハプロタイプが広域かつ離散的に分布する種であることが明らかにされた。この特徴は,ハプロタイプの分布に明瞭な地理的まとまりをもつことの多い日本産木本植物などとは異なるものであり,里山における人為的な利用がワレモコウの遺伝構造に影響を与えた可能性が示唆された。
ISSN:0916-7439
0916-7439
DOI:10.7211/jjsrt.38.115