マイクロエマルション重合の動力学
マイクロエマルション重合では常にミセル数が生成高分子粒子やラジカルの数より遥かに多いことを考慮し,水相中のラジカルはすべて別々のミセルに侵入し成長反応をおこしてミセルを高分子粒子に転化させると仮定した動力学的モデルを提案した.このモデルでは,高分子ラジカルの成長は連鎖移動反応によってのみ停止し,また,高分子粒子の成長は,連鎖移動反応により生じる低分子ラジカルの粒子外への脱出によってのみ終了する.このモデルに基づき,スチレンのマイクロエマルション重合における重合速度,生成高分子の分子量分布,生成高分子粒子数および粒子径分布の経時変化を予測したところ,予測値は実測値とおおむね良好に一致した.油溶性...
Saved in:
Published in | 高分子論文集 Vol. 64; no. 6; pp. 343 - 354 |
---|---|
Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 高分子学会
2007
|
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | マイクロエマルション重合では常にミセル数が生成高分子粒子やラジカルの数より遥かに多いことを考慮し,水相中のラジカルはすべて別々のミセルに侵入し成長反応をおこしてミセルを高分子粒子に転化させると仮定した動力学的モデルを提案した.このモデルでは,高分子ラジカルの成長は連鎖移動反応によってのみ停止し,また,高分子粒子の成長は,連鎖移動反応により生じる低分子ラジカルの粒子外への脱出によってのみ終了する.このモデルに基づき,スチレンのマイクロエマルション重合における重合速度,生成高分子の分子量分布,生成高分子粒子数および粒子径分布の経時変化を予測したところ,予測値は実測値とおおむね良好に一致した.油溶性開始剤を用いた場合の重合速度の値は系全体でのラジカル発生速度が同一の条件で水溶性開始剤を用いた場合の値に比べて低かった.これはミセルや粒子などの微小空間で発生したペアラジカルは水相へと脱出することなく迅速に 2 分子停止反応を生起することを示唆する. |
---|---|
ISSN: | 0386-2186 1881-5685 |
DOI: | 10.1295/koron.64.343 |