“九州本土の天然杉”とされる大崩山系鬼の目山スギ個体群の遺伝解析に基づく遺存集団としての可能性の検証

本研究では,宮崎県延岡市の鬼の目山に分布するスギ(Cryptomeria japonica)個体群を対象としてDNA分析に基づき本個体群の遺存集団としての可能性の検証を試みた。調査地内の個体の胸高直径(DBH)と樹高を計測した結果,DBHは40年前に実施された調査結果よりも成長していたが,樹高には明確な成長は認められなかった。調査地の個体ごとの地理座標を取得した結果,約40年前に行われた調査結果と厳密に個体を対応させることはできなかったものの,個体数の著しい減少は認められなかった。本個体群の適正な保全を行うためにも個体単位での定期的な調査が必要であると考えられる。本個体群を対象にDNA分析を行...

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Published in日本森林学会誌 Vol. 107; no. 4; pp. 78 - 84
Main Authors 田村 美帆, 武津 英太郎, 弓削 直樹, 渡辺 敦史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本森林学会 31.05.2025
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ISSN1349-8509
1882-398X
DOI10.4005/jjfs.107.78

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Summary:本研究では,宮崎県延岡市の鬼の目山に分布するスギ(Cryptomeria japonica)個体群を対象としてDNA分析に基づき本個体群の遺存集団としての可能性の検証を試みた。調査地内の個体の胸高直径(DBH)と樹高を計測した結果,DBHは40年前に実施された調査結果よりも成長していたが,樹高には明確な成長は認められなかった。調査地の個体ごとの地理座標を取得した結果,約40年前に行われた調査結果と厳密に個体を対応させることはできなかったものの,個体数の著しい減少は認められなかった。本個体群の適正な保全を行うためにも個体単位での定期的な調査が必要であると考えられる。本個体群を対象にDNA分析を行った結果,ヘテロ接合体率は供試した他スギ集団と同程度であり,個体群内には明確な遺伝構造は存在しなかった。さらに,本個体群は他のスギ集団と比較して異なる遺伝構造を示し,さし木苗の植栽や在来品種の積極的な利用の痕跡は認められなかった。本個体群は以前の報告で九州に遺存するスギ集団の可能性が高いと結論づけられたが, DNA分析の結果からも前報の結論を支持する。
ISSN:1349-8509
1882-398X
DOI:10.4005/jjfs.107.78