北太平洋亜寒帯における鉄の供給過程

北太平洋亜寒帯は,1年を通して表層水中の栄養塩が枯渇しない代表的な高栄養塩・低クロロフィル(HNLC)海域の1つであり,海水中の微量必須栄養塩の鉄の不足によって植物プランクトンの増殖が制限されていることが知られている。このため,北太平洋亜寒帯域における一次生産を理解するためには,鉄の分布や供給過程を明らかにする必要がある。しかし,鉄は観測時に汚染を受けやすく,海水中の濃度レベルが極めて低いため,その分布や循環過程が十分に明らかにされているとは言いがたい。そこで本稿では,北太平洋亜寒帯における海水中の鉄の分布や供給過程について,これまでに得られている知見をまとめ,今後の課題を議論する。特に鉄の供...

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Published in海の研究 Vol. 26; no. 3; pp. 79 - 93
Main Authors 小畑, 元, 金, 泰辰, 西岡, 純
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本海洋学会 15.05.2017
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Summary:北太平洋亜寒帯は,1年を通して表層水中の栄養塩が枯渇しない代表的な高栄養塩・低クロロフィル(HNLC)海域の1つであり,海水中の微量必須栄養塩の鉄の不足によって植物プランクトンの増殖が制限されていることが知られている。このため,北太平洋亜寒帯域における一次生産を理解するためには,鉄の分布や供給過程を明らかにする必要がある。しかし,鉄は観測時に汚染を受けやすく,海水中の濃度レベルが極めて低いため,その分布や循環過程が十分に明らかにされているとは言いがたい。そこで本稿では,北太平洋亜寒帯における海水中の鉄の分布や供給過程について,これまでに得られている知見をまとめ,今後の課題を議論する。特に鉄の供給過程として,大気を経由したエアロゾルの降下,沿岸域からの水平輸送を取り上げ,最近の研究成果を紹介する。
ISSN:0916-8362
2186-3105
DOI:10.5928/kaiyou.26.3_79