公衆衛生・医療の観点からみたジェンダー格差

本稿では、政府の対策に関与した立場から、日本の感染状況、ワクチン接種、診療に限定して、ジェンダーの視点から現状と課題を振り返る。第6波では、高齢者施設等での集団感染が多発し、新規感染者の女性比率が男性を上回り、ケア労働に従事する女性と高齢女性の感染防止や集団感染発生時の支援に課題を残した。ワクチン接種は、男性より女性の接種意向が低いが、接種しやすい環境整備など施策強化が必要である。診療では妊婦を中心に感染や重症化リスクが検討されたが、遷延症状に悩む女性が信頼できる診療と職域復帰支援の体制が必要である。今後、社会経済活動を優先する対策への転換に伴い、感染制御とケア労働の責務を負った女性の負担はさ...

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Published in学術の動向 Vol. 27; no. 5; pp. 5_29 - 5_34
Main Author 武藤, 香織
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本学術協力財団 01.05.2022
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ISSN1342-3363
1884-7080
DOI10.5363/tits.27.5_29

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Summary:本稿では、政府の対策に関与した立場から、日本の感染状況、ワクチン接種、診療に限定して、ジェンダーの視点から現状と課題を振り返る。第6波では、高齢者施設等での集団感染が多発し、新規感染者の女性比率が男性を上回り、ケア労働に従事する女性と高齢女性の感染防止や集団感染発生時の支援に課題を残した。ワクチン接種は、男性より女性の接種意向が低いが、接種しやすい環境整備など施策強化が必要である。診療では妊婦を中心に感染や重症化リスクが検討されたが、遷延症状に悩む女性が信頼できる診療と職域復帰支援の体制が必要である。今後、社会経済活動を優先する対策への転換に伴い、感染制御とケア労働の責務を負った女性の負担はさらに高まることが予想される。地域差のない迅速な相談支援体制の確立とともに、ピアサポートを通じて新たな知恵の創出と分かち合いが進むことを願う。
ISSN:1342-3363
1884-7080
DOI:10.5363/tits.27.5_29