観光客の津波避難の支援対応に関する観光地の従業員の認識

南海トラフ地震等の海溝型地震が発生した場合には,沿岸部の観光地域では,地域住民とともに観光客及び観光関連産業に携わる従業員を含めた全員が津波浸水危険区域から安全な場所に緊急的に退避することが求められる。緊急的な対応を取る中で,その場に居合わせる従業員は,避難対応のために何らかの役割を担う可能性は高い。本研究では,観光関連産業に携わる従業員を対象として,南海トラフ地震発生後に生じる観光客への支援対応の課題,実行可能性,責任の認識,及び行動意図を示すとともに,回答者の属性と南海トラフ地震による揺れと津波の危険性の認識を確認し,それらの関連構造を明らかにすることを目的とする。調査対象地域は和歌山県白...

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Published in自然災害科学 Vol. 41; no. 4; pp. 363 - 390
Main Author 照本, 清峰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本自然災害学会 28.02.2023
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Summary:南海トラフ地震等の海溝型地震が発生した場合には,沿岸部の観光地域では,地域住民とともに観光客及び観光関連産業に携わる従業員を含めた全員が津波浸水危険区域から安全な場所に緊急的に退避することが求められる。緊急的な対応を取る中で,その場に居合わせる従業員は,避難対応のために何らかの役割を担う可能性は高い。本研究では,観光関連産業に携わる従業員を対象として,南海トラフ地震発生後に生じる観光客への支援対応の課題,実行可能性,責任の認識,及び行動意図を示すとともに,回答者の属性と南海トラフ地震による揺れと津波の危険性の認識を確認し,それらの関連構造を明らかにすることを目的とする。調査対象地域は和歌山県白浜町白良浜周辺地域である。南海トラフ巨大地震の津波浸水想定区域内で働いている事業主,管理者,正規従業員,非正規従業員を対象として,質問紙調査票を用いた調査を実施した。分析結果より,従業員から観光客に対して情報が行き届かないことに関する課題の認識は,支援対応の実行可能性の認識を減少させる規定要因であることが明らかになった。また,災害時要配慮者の支援の実行可能性の認識は,支援対応の責任の認識に大きく影響していることが示された。
ISSN:0286-6021
2434-1037
DOI:10.24762/jndsj.41.4_363