秋季の加温処理が狭い範囲で産地の異なるアカマツ苗の成長に及ぼす影響

本研究では,温暖化に伴って気候帯が北上した際にアカマツの当年生苗の成長が受ける影響を検討する目的の育成実験を行った。具体的には,紀伊半島南部の母樹の種子から得た当年生苗を 50 km 北の和歌山市へ移動させ,そこに履歴を持つ実生苗とともに 2008 年 8 月 25 日,9 月 10 日,9 月 25 日に分けて,グロースチャンバー(外気温区,3℃ 加温区)へ搬入した。その結果,3℃ の加温は両産地の当年生苗の冬芽の発育期間を長くすることはなく,むしろ,冬芽内での葉原基形成を抑制し,翌春に展開する針葉束数を少なくし,その影響によって 2 年生苗の主軸伸長量は小さくなった。さらに,主軸における葉...

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Published in日本緑化工学会誌 Vol. 37; no. 1; pp. 32 - 37
Main Authors 中島, 敦司, 青木, まどか, 山本, 将功, 平田, 真智子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本緑化工学会 2011
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ISSN0916-7439
0916-7439
DOI10.7211/jjsrt.37.32

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Summary:本研究では,温暖化に伴って気候帯が北上した際にアカマツの当年生苗の成長が受ける影響を検討する目的の育成実験を行った。具体的には,紀伊半島南部の母樹の種子から得た当年生苗を 50 km 北の和歌山市へ移動させ,そこに履歴を持つ実生苗とともに 2008 年 8 月 25 日,9 月 10 日,9 月 25 日に分けて,グロースチャンバー(外気温区,3℃ 加温区)へ搬入した。その結果,3℃ の加温は両産地の当年生苗の冬芽の発育期間を長くすることはなく,むしろ,冬芽内での葉原基形成を抑制し,翌春に展開する針葉束数を少なくし,その影響によって 2 年生苗の主軸伸長量は小さくなった。さらに,主軸における葉を着生しない葉部分の割合は大となった。このように,3℃ の温暖化は,アカマツ苗の成長を抑制することに加え,数十 km 程度の北方への移動では,成長への抑制は解消されない可能性が指摘できた。
ISSN:0916-7439
0916-7439
DOI:10.7211/jjsrt.37.32