2018年7月5〜8日の梅雨前線豪雨におけるメソαスケールの変化

2018年7月5〜8日の西日本の大雨において,期間中の降水の変化をもたらしたメソαスケールの現象を明らかにするために,132.5°Eの変化に着目して,JRA-55再解析データを用いて準地衡風オメガ方程式により診断を行った.期間中の降水の継続は下層の水蒸気の流入と層厚移流のラプラシアンに関連した上昇流で説明できる.この事例では上層トラフに伴う渦度移流の鉛直傾度では下層の上昇流は説明できないが,その影響によって生じた下層低気圧性循環と暖気移流とが間接的に降水強化に寄与したと考えられる.ただし,中層では期間半ばに正渦度移流の先行を伴わない正渦度擾乱も観測された.これは強雨に伴う非断熱加熱によって強め...

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Published in天気 Vol. 67; no. 8; pp. 431 - 443
Main Authors 北畠, 尚子, 黒良, 龍太, 長田, 栄治, 杉原, 良
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本気象学会 2020
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Summary:2018年7月5〜8日の西日本の大雨において,期間中の降水の変化をもたらしたメソαスケールの現象を明らかにするために,132.5°Eの変化に着目して,JRA-55再解析データを用いて準地衡風オメガ方程式により診断を行った.期間中の降水の継続は下層の水蒸気の流入と層厚移流のラプラシアンに関連した上昇流で説明できる.この事例では上層トラフに伴う渦度移流の鉛直傾度では下層の上昇流は説明できないが,その影響によって生じた下層低気圧性循環と暖気移流とが間接的に降水強化に寄与したと考えられる.ただし,中層では期間半ばに正渦度移流の先行を伴わない正渦度擾乱も観測された.これは強雨に伴う非断熱加熱によって強められたものと考えられる.期間末期には,スケールの小さい対流性擾乱により局地的な強雨が生じた.これは下層では湿潤な暖気移流が持続し,中層で乾燥空気が流入したため,対流不安定となったことが寄与していたと考えられる.
ISSN:0546-0921
2434-1185
DOI:10.24761/tenki.67.8_431