直腸,肛門粘膜における凍結組織障害の超微形態学的観察

外痔核に液状炭酸又は液体窒素による接触凍結を行ったのち,速かに摘除した14症例について,光顕ならびに電顕的検索を行った. 凍結部は,組織学的所見より,壊死層,類壊死層,浮腫層などに区分したが,液状炭酸に比し,液体窒素による侵襲度が高く,痔核断面における侵襲範囲は,前者では5.6mm(水平方向),2.1mm(垂直方向),後者では12.6mm(水平方向),5.6mm(唾直方向)と,計測された.なお,重層扁平上皮被覆域は,腺上皮,移行上皮域よりも低抗性が大である.しかし,侵襲範囲は,凍結条件により区々となるが,垂直方向の侵襲は,上皮下に存する内括約筋,縦走筋,血管などの走向によって,ある程度抑制され...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 32; no. 2; pp. 109 - 124,182
Main Authors 水野, 惇子, 吉田, 鉄郎, 一森, 繁生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 1979
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.32.109

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Summary:外痔核に液状炭酸又は液体窒素による接触凍結を行ったのち,速かに摘除した14症例について,光顕ならびに電顕的検索を行った. 凍結部は,組織学的所見より,壊死層,類壊死層,浮腫層などに区分したが,液状炭酸に比し,液体窒素による侵襲度が高く,痔核断面における侵襲範囲は,前者では5.6mm(水平方向),2.1mm(垂直方向),後者では12.6mm(水平方向),5.6mm(唾直方向)と,計測された.なお,重層扁平上皮被覆域は,腺上皮,移行上皮域よりも低抗性が大である.しかし,侵襲範囲は,凍結条件により区々となるが,垂直方向の侵襲は,上皮下に存する内括約筋,縦走筋,血管などの走向によって,ある程度抑制される. 凍結により,速かに細胞外腔の浮腫状拡張,氷晶による細胞の圧迫,細胞体内にあっては,ミトコンドリア,粗面小胞体の膨化,vesiculationなどを示し,また多くは核周にみられる細胞基質の粗化,融解とともに大小の液胞形成,氷晶化を示す.多くの細胞は膨化傾向を示すが,一部は濃縮性である.移行上皮細胞は,球状膨化を呈するが,胞体内の酸性粘液多糖体はcryoprotectiveに作用するものと考えられる. 間質においては,血管内皮細胞の感受性が大で,変性に陥り,透過性亢進,血小板凝集,線維素析出をきたし,血栓形成の傾向を示す.有髄,無髄神経線維束は,内,外鞘の浮腫,線維細胞,シュワン細胞の変性や小氷晶形成を伴なう.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.32.109