Angiodysplasiaが原因であった虫垂出血の1例

症例は51歳の男性で,下血を主訴に来院した.採血検査では貧血や凝固系異常は認めず,腹部造影CTでは明らかな出血源は認めなかった.緊急下部消化管内視鏡検査では虫垂開口部より湧出性出血を認めたが,明らかな出血源は同定できず,散布チューブにて虫垂内腔にトロンビン1万単位を散布し入院経過観察とした.第3病日より間歇的血便を認めたため腹腔鏡下虫垂切除術を施行する方針とした.術中,虫垂に炎症所見は認めず,自動縫合器で虫垂根部を含め虫垂切除を施行した.切除標本肉眼所見では虫垂根部近傍に粘膜の点状出血部を認めた.病理所見では粘膜固有層内にフィブリン血栓を伴った毛細血管の拡張とその周囲の粘膜内出血を認めたためこ...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 45; no. 6; pp. 657 - 663
Main Authors 新井, 周華, 小田, 健司, 布村, 正夫, 安藤, 克彦, 塩原, 正之, 崔, 玉仙, 池永, 貴洋, 更科, 廣實, 窪澤, 仁, 宮崎, 勝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.06.2012
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Summary:症例は51歳の男性で,下血を主訴に来院した.採血検査では貧血や凝固系異常は認めず,腹部造影CTでは明らかな出血源は認めなかった.緊急下部消化管内視鏡検査では虫垂開口部より湧出性出血を認めたが,明らかな出血源は同定できず,散布チューブにて虫垂内腔にトロンビン1万単位を散布し入院経過観察とした.第3病日より間歇的血便を認めたため腹腔鏡下虫垂切除術を施行する方針とした.術中,虫垂に炎症所見は認めず,自動縫合器で虫垂根部を含め虫垂切除を施行した.切除標本肉眼所見では虫垂根部近傍に粘膜の点状出血部を認めた.病理所見では粘膜固有層内にフィブリン血栓を伴った毛細血管の拡張とその周囲の粘膜内出血を認めたためこれが出血の原因と考えangiodysplasiaと病理診断した.術後経過順調で術後4日目に退院となった.虫垂出血の原因がangiodysplasiaであった症例は本邦では2例目であり,若干の文献的考察を加え報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.45.657