早期大腸癌に対する透明キャップを用いた内視鏡的粘膜切除術の有用性

早期胃癌および早期食道癌に対する内視鏡的粘膜切除術においては,透明キャップを用いた陰圧吸引下における内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection using a transparent cap,以下EMR-C)が普及しつつある。しかし,大腸病変に対しては,大腸壁が薄いため穿孔の危険があるとされ,一般には普及していない。われわれは1995年以降,大腸腫瘍性病変27病変(このうち早期大腸癌12病変)に対しEMR-Cを施行してきており,①病変の粘膜下層に10-20mlという大量の生理的食塩水を注入し大きく膨張させることにより,病変を筋層より十分に剥離させる,②切除の途...

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Published in消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy Vol. 50; pp. 168 - 172
Main Authors 六倉, 俊哉, 三輪, 博久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部 06.06.1997
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Summary:早期胃癌および早期食道癌に対する内視鏡的粘膜切除術においては,透明キャップを用いた陰圧吸引下における内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection using a transparent cap,以下EMR-C)が普及しつつある。しかし,大腸病変に対しては,大腸壁が薄いため穿孔の危険があるとされ,一般には普及していない。われわれは1995年以降,大腸腫瘍性病変27病変(このうち早期大腸癌12病変)に対しEMR-Cを施行してきており,①病変の粘膜下層に10-20mlという大量の生理的食塩水を注入し大きく膨張させることにより,病変を筋層より十分に剥離させる,②切除の途中でスネアを一時ゆるめることにより,絞扼されている可能性のある筋層を解除する,などの工夫を行うことにより,大腸病変に対しても安全にEMR-Cを施行しうると考えている。そして断端が病変近傍の場合には,顕微鏡的遺残病変を消滅させるため,高周波凝固による焼灼術を追加して行っており,早期大腸癌12症例中1例のみが,病変が広範で切除不可能と判断されたため手術を要したが,その他の11症例においては遺残,再発を認めていない。本法は,直腸病変に対しては穿孔の危険がないので安心して施行しうる。また,襞の裏側の病変などの正面視が困難な病変の切除にも適している。さらに,側方進展を示す病変に対しても,分割切除の手技が容易に行えることより非常に有用である。切除後には送気を行わず,クリップによる縫縮術を速やかに施行することにより穿孔,出血に対する予防を行っており,合併症は1例も経験していない。本法は早期大腸癌に対する治療法として,特に側方進展を示す病変に対し,極めて有用な治療法と考えられる。
ISSN:0389-9403
2189-0021
DOI:10.11641/pdensks.50.0_168