原発巣と同時に切除した腎細胞癌胆嚢転移の1例

症例は63歳の男性で,検診時の腹部エコーにて左腎腫瘍,および胆嚢腫瘍を指摘された.精査の結果,左腎癌,原発性胆嚢癌の術前診断で左腎摘出,および拡大胆嚢摘出術を同時に施行した.病理組織学的検査の結果,左腎腫瘍,胆嚢腫瘍ともにclear cell carcinomaの像を呈しており,腎癌の胆嚢転移と診断された.術後療法としてインターフェロン投与を開始し第30病日に退院となった.同一症例に複数の腫瘍性病変を認めた場合,その診断および治療方針の決定にはしばしば難渋する.腎細胞癌の胆嚢転移症例について過去34例の報告をもとに,術前診断の可否,術式選択について検討した.胆嚢腫瘍が原発性か転移性かの診断には...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 43; no. 5; pp. 524 - 530
Main Authors 京極, 典憲, 奥芝, 俊一, 北城, 秀司, 川原田, 陽, 加藤, 弘明, 海老原, 裕磨, 中宮, 紀子, 町野, 倫太郎, 佐藤, 英俊, 加藤, 紘之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.05.2010
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Summary:症例は63歳の男性で,検診時の腹部エコーにて左腎腫瘍,および胆嚢腫瘍を指摘された.精査の結果,左腎癌,原発性胆嚢癌の術前診断で左腎摘出,および拡大胆嚢摘出術を同時に施行した.病理組織学的検査の結果,左腎腫瘍,胆嚢腫瘍ともにclear cell carcinomaの像を呈しており,腎癌の胆嚢転移と診断された.術後療法としてインターフェロン投与を開始し第30病日に退院となった.同一症例に複数の腫瘍性病変を認めた場合,その診断および治療方針の決定にはしばしば難渋する.腎細胞癌の胆嚢転移症例について過去34例の報告をもとに,術前診断の可否,術式選択について検討した.胆嚢腫瘍が原発性か転移性かの診断には病理組織学的検討を要するため,術前に診断を確定することは不可能である.したがって,腎および胆嚢に腫瘍を認める場合,癌遺残を防ぐためには原発性胆嚢癌に準じた術式を選択すべきである.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.43.524