保存的に経過観察しえた坐骨ヘルニアによるイレウスの1例

症例は75歳の女性で,腹痛,発熱,嘔吐を主訴に救急搬送された.画像上,坐骨孔より脱出する小腸と腸管の拡張を認め,坐骨ヘルニアによるイレウスと診断し,緊急入院となった.触診上,腸管虚血や壊死を示唆する所見はなく,またイレウス管造影検査で,腸管の完全閉塞が否定されたため,緊急手術は施行せず,保存的に経過観察を行った.第5病日,イレウス管を抜去し経口摂取を開始したが,腹部症状の増悪はなく,第56病日に転院となった.その後,特にイレウスの再燃はなく,15か月が経過している.坐骨ヘルニアは非常にまれな疾患であり,文献検索にて,海外で51例,本邦では自験例を含め10例の報告をみるにすぎない.今回,我々は坐...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 43; no. 7; pp. 741 - 745
Main Authors 稲田, 悠紀, 松木, 充, 梅本, 健司, 三好, 和裕, 打田, 裕明, 川崎, 浩資, 西田, 司, 石橋, 孝嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.07.2010
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.43.741

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Summary:症例は75歳の女性で,腹痛,発熱,嘔吐を主訴に救急搬送された.画像上,坐骨孔より脱出する小腸と腸管の拡張を認め,坐骨ヘルニアによるイレウスと診断し,緊急入院となった.触診上,腸管虚血や壊死を示唆する所見はなく,またイレウス管造影検査で,腸管の完全閉塞が否定されたため,緊急手術は施行せず,保存的に経過観察を行った.第5病日,イレウス管を抜去し経口摂取を開始したが,腹部症状の増悪はなく,第56病日に転院となった.その後,特にイレウスの再燃はなく,15か月が経過している.坐骨ヘルニアは非常にまれな疾患であり,文献検索にて,海外で51例,本邦では自験例を含め10例の報告をみるにすぎない.今回,我々は坐骨ヘルニアによるイレウスと画像診断し,保存的に経過観察しえた症例を経験したので,これを提示するとともに,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.43.741