膵癌に対する標準・拡大郭清手術の無作為比較試験の検証と今後の視点
膵癌に対する標準郭清手術と拡大郭清手術との間には,治療成績をめぐって論争があり,無作為比較試験(randomized controlled trial:以下,RCT)による評価が不可欠であった.本邦と欧米で四つのRCTが行われ,両者の生存成績に有意差がないことが明確になったが,その結果の評価は各研究デザインには違いがあり,十分検証して今後に生かす必要がある.各RCTで治癒切除率は両群で高く差はなく,また欧米のRCTでは補助療法を付加しており,拡大郭清の意義は根治性でなく,大動脈周囲リンパ節郭清の効果にかぎって評価すべきと解される.現在対象の進行癌はすでに全身病であり,もはや局所対策の大動脈周囲...
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Published in | 日本消化器外科学会雑誌 Vol. 43; no. 7; pp. 696 - 703 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本消化器外科学会
01.07.2010
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0386-9768 1348-9372 |
DOI | 10.5833/jjgs.43.696 |
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Summary: | 膵癌に対する標準郭清手術と拡大郭清手術との間には,治療成績をめぐって論争があり,無作為比較試験(randomized controlled trial:以下,RCT)による評価が不可欠であった.本邦と欧米で四つのRCTが行われ,両者の生存成績に有意差がないことが明確になったが,その結果の評価は各研究デザインには違いがあり,十分検証して今後に生かす必要がある.各RCTで治癒切除率は両群で高く差はなく,また欧米のRCTでは補助療法を付加しており,拡大郭清の意義は根治性でなく,大動脈周囲リンパ節郭清の効果にかぎって評価すべきと解される.現在対象の進行癌はすでに全身病であり,もはや局所対策の大動脈周囲リンパ節の予防的郭清の意義はないと思われる.しかも拡大郭清の有効性は理論上小さく,評価には膨大な症例を要しRCTの規模に問題残るが,それによる評価は現実的ではない.拡大郭清論議には終止符を打ち,今後は治癒切除に付加する補助療法の確立に全力を注ぐべきと思われる. |
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ISSN: | 0386-9768 1348-9372 |
DOI: | 10.5833/jjgs.43.696 |