気道・食道浸潤に対する手術の適応と限界

気道・食道浸潤甲状腺癌は無症状のこともあるが,腫瘍浸潤が粘膜面に到達すると,血痰や呼吸困難,嚥下困難などの症状を引き起こす。治療方針は,浸潤の部位と深さ,範囲で決定される。粘膜発生の腫瘍と異なり,浸潤は気道・食道の外から始まり内腔へ向かうため,内視鏡検査でも浸潤範囲の正確な診断は難しい。このため,外科医は切除範囲の決定を術中に迫られることになる。気管粘膜に到達する浸潤では全層切除が必要であり,近年は術後管理が容易な気管窓状切除+気管皮膚瘻,二期的再建を採用する施設が増えている。TKIの登場は再発性気道浸潤甲状腺癌の手術適応に影響を与えている。放射性ヨウ素治療抵抗性の遠隔転移にTKIを使用すると...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 Vol. 35; no. 1; pp. 24 - 29
Main Authors 星, 雅恵, 筒井, 英光, 久保田, 光博, 田村, 温美, 小原, 亮爾, 矢野, 由希子, 池田, 徳彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会 2018
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN2186-9545
DOI10.11226/jaesjsts.35.1_24

Cover

More Information
Summary:気道・食道浸潤甲状腺癌は無症状のこともあるが,腫瘍浸潤が粘膜面に到達すると,血痰や呼吸困難,嚥下困難などの症状を引き起こす。治療方針は,浸潤の部位と深さ,範囲で決定される。粘膜発生の腫瘍と異なり,浸潤は気道・食道の外から始まり内腔へ向かうため,内視鏡検査でも浸潤範囲の正確な診断は難しい。このため,外科医は切除範囲の決定を術中に迫られることになる。気管粘膜に到達する浸潤では全層切除が必要であり,近年は術後管理が容易な気管窓状切除+気管皮膚瘻,二期的再建を採用する施設が増えている。TKIの登場は再発性気道浸潤甲状腺癌の手術適応に影響を与えている。放射性ヨウ素治療抵抗性の遠隔転移にTKIを使用するとき,局所浸潤腫瘍が併存すると,病変の急速な縮小に伴い致死的瘻孔を形成する可能性がある。TKI治療を安全に実施するには,予め浸潤腫瘍を切除しておく必要がある。われわれは気管壁深層浸潤においては,初回手術での全層切除こそが患者の予後とQOLを改善すると考えている。
ISSN:2186-9545
DOI:10.11226/jaesjsts.35.1_24