日本語母語話者の相談における「第三者への言及」

本研究では、参与者2人の日本語母語話者による相談場面において、相談の課題達成に関わる「第三者への言及」にはどのような種類があり、それがどのように行われているか分析を行った。「第三者への言及」をめぐる先行研究としては、筒井(2012)、高宮(2018)、上林(2019)などが挙げられるが、これらは主として雑談を分析対象として、話題に持ち込まれた第三者についていかに言及がなされるかを分析したものであり、本研究で分析を行ったような、相談などのタスクが設定された場面において、その課題達成に深く関連している第三者をいかに言及するかについて分析している研究は極めて少ない。そこで、本研究では、親しい間柄の2...

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Published in待遇コミュニケーション研究 Vol. 18; p. 69
Main Authors 許, 亜寧, 立見, 洸貴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 待遇コミュニケーション学会 01.04.2021
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Summary:本研究では、参与者2人の日本語母語話者による相談場面において、相談の課題達成に関わる「第三者への言及」にはどのような種類があり、それがどのように行われているか分析を行った。「第三者への言及」をめぐる先行研究としては、筒井(2012)、高宮(2018)、上林(2019)などが挙げられるが、これらは主として雑談を分析対象として、話題に持ち込まれた第三者についていかに言及がなされるかを分析したものであり、本研究で分析を行ったような、相談などのタスクが設定された場面において、その課題達成に深く関連している第三者をいかに言及するかについて分析している研究は極めて少ない。そこで、本研究では、親しい間柄の20代の日本語母語話者による2人会話、計3組を調査対象として、「2人で、(共通の友人である)Cの誕生日会を企画する」という相談を行ってもらい、その相談談話を分析対象にして、第三者に関してどのような言及が行われているか分析および考察を行った。本研究での分析の結果、以下の3点が明らかになった。Ⅰ.日本語母語話者の相談談話における「第三者への言及」では、3種類の言及が見られた。具体的には、第三者の好み、都合など第三者の事情について言及する「第三者の情報の言及(言及①)」、第三者の発話や気持ちを第三者に代わって言語化する「第三者の反応の想像(言及②)」、発話内に第三者の名前のみが含まれている「第三者の名前のみ(言及③)」という言及が行われていた。Ⅱ.言及①について、「a.第三者に関する具体的なエピソードを提示する」、「b.第三者に関する客観的で恒常的な事実を提示する」、「c.第三者のことを考慮し、選ばれうる他の選択肢の可能性を否定する」という特徴が見られた。このことから、日本語母語話者の相談場面に見られる「第三者への言及」においては、具体性に志向した発話を重ねることで、情報の根拠性を高めることが重視されていると考えられる。Ⅲ.言及②について、「a.第三者になりきって第三者の発話を想像する」、「b.第三者の気持ちを想像する」という特徴が見られた。このような言及は、臨場感を高めたり、場を盛り上げたりするとともに、話し手の評価を間接的に伝える働きを持っていると考察した。
ISSN:1348-8481
2434-4680
DOI:10.32252/tcg.18.0_69