虫垂炎による直腸狭窄の1例

症例は 63歳,女性。1ヵ月ほど前より持続する難治性の便秘症状で当院を受診した。腹部CT検査で,直腸Rs部に全周性の壁肥厚および脂肪織濃度上昇を認め,右骨盤内に虫垂と連続する不整な軟部組織を認めた。大腸内視鏡検査と注腸造影検査で直腸狭窄を認めたが,明らかな腫瘍性病変は認めなかった。早晩腸閉塞を発症することが予想されたため,同日人工肛門造設術を施行した。術中所見では,直腸と子宮,卵巣が一塊となり強固に癒着していた。悪性腫瘍が原因である場合には根治切除が困難であったため,姑息的に横行結腸で双孔式人工肛門を造設した。術後6日目の大腸内視鏡検査で狭窄は改善し,腫瘍性病変を認めなかった。虫垂炎の炎症波及...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 44; no. 3; pp. 507 - 511
Main Authors 尾﨑, 航太郎, 高橋, 崇真, 高山, 祐一, 前田, 敦行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.03.2024
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Summary:症例は 63歳,女性。1ヵ月ほど前より持続する難治性の便秘症状で当院を受診した。腹部CT検査で,直腸Rs部に全周性の壁肥厚および脂肪織濃度上昇を認め,右骨盤内に虫垂と連続する不整な軟部組織を認めた。大腸内視鏡検査と注腸造影検査で直腸狭窄を認めたが,明らかな腫瘍性病変は認めなかった。早晩腸閉塞を発症することが予想されたため,同日人工肛門造設術を施行した。術中所見では,直腸と子宮,卵巣が一塊となり強固に癒着していた。悪性腫瘍が原因である場合には根治切除が困難であったため,姑息的に横行結腸で双孔式人工肛門を造設した。術後6日目の大腸内視鏡検査で狭窄は改善し,腫瘍性病変を認めなかった。虫垂炎の炎症波及による直腸狭窄と診断し,初回手術から4ヵ月後に虫垂切除術と人工肛門閉鎖術を施行した。病理組織学的検査では悪性所見は認めなかった。今回,虫垂炎による直腸狭窄をきたしたまれな症例を経験したので報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.44.507