歯科保健指導における口腔内スキャナーの応用 指導効果の検証

目的:われわれは,歯科保健指導に口腔内スキャナー(IOS)を活用することで,歯周組織の変化の定量化と可視化を図り,患者が歯周組織の状態を理解しやすくするとともに治療効果の診査の確度を向上させることを目的として検討を進めてきた. 本研究では,従来の歯科保健指導方法とIOSを用いた歯科保健指導を比較検討し,IOSを用いた歯科保健指導の有用性について検討した. 対象と方法:研究対象は,十分な歯科保健指導を受けた経験がない本学教職員および学生の計9名(平均年齢41.6歳)とし,歯科衛生士3名が,以下の歯科保健指導を研究対象者ごとに2週間以上の間隔をあけ,順序を変えて実施した.①従来法1:鏡のみを利用し...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 66; no. 1; pp. 35 - 46
Main Authors 梶, 貢三子, 樋口, 鎮央, 柿本, 和俊, 谷, 亜希奈, 大森, あかね
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 28.02.2023
日本歯科保存学会
Subjects
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.66.35

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Summary:目的:われわれは,歯科保健指導に口腔内スキャナー(IOS)を活用することで,歯周組織の変化の定量化と可視化を図り,患者が歯周組織の状態を理解しやすくするとともに治療効果の診査の確度を向上させることを目的として検討を進めてきた. 本研究では,従来の歯科保健指導方法とIOSを用いた歯科保健指導を比較検討し,IOSを用いた歯科保健指導の有用性について検討した. 対象と方法:研究対象は,十分な歯科保健指導を受けた経験がない本学教職員および学生の計9名(平均年齢41.6歳)とし,歯科衛生士3名が,以下の歯科保健指導を研究対象者ごとに2週間以上の間隔をあけ,順序を変えて実施した.①従来法1:鏡のみを利用した歯科保健指導,②従来法2:鏡に加え口腔内写真とスタディーモデルを利用した歯科保健指導,③IOS法:IOS記録のみを利用した歯科保健指導.各回の歯科保健指導時には,歯周精密検査,プラークコントロールレコード(PCR)および歯肉の状態を記録するとともにIOSで口腔内を記録した.2回目以降は,研究対象者に記録時の不快感や指導のわかりやすさについて調査票に回答してもらった.IOSの記録は,3D測定データ評価ソフトウェアにて分析した. 結果:IOSでの記録では,従来の歯周組織検査よりも詳細に歯肉の変化を把握できた.IOSによる記録を重ね合わせて求めた辺縁歯肉表面の偏差,すなわち変化量においては,プロービングデプス,歯肉の腫脹,発赤の検査結果およびBOPの変化との関係性が低かった.IOSを用いた歯科保健指導と従来の指導法との間には,指導効果の差は認められなかった.IOSによる記録を不快に感じる研究対象者がいたが,多くはIOSによる保健指導はわかりやすく,受けたい指導であると回答した. 結論:現状では,IOSを用いた歯科保健指導の臨床的有用性は必ずしも高いとはえいない.また,IOSの記録を1歯ずつ位置合わせすることで詳細に歯肉の変化を把握できるが,非常に長い時間を費やすために臨床的に有用とはいえず,ブロック単位での位置合わせが適切と考えられた.しかしながら,IOSによる記録は,これまでの歯周組織検査とは異なる視点で歯肉を詳細に評価できる方法であり,患者・術者両者にとって理解しやすい方法である.今後,研究を進めることで歯科保健指導に効果的に活用できる可能性があると考えられる.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.66.35