遺伝子検査にて同定したCandida allociferriiによる外耳道真菌症の1例

Candida allociferriiはStephanoascus ciferrii complexの一種として提唱された稀な酵母様真菌であり,国内における分離例は眼窩内膿瘍からの1例のみが報告されている。今回,C. allociferriiによる外耳道真菌症の1例を経験したので報告する。症例は50歳代男性。右耳の掻痒感及び耳漏を主訴に受診し,耳漏検体が提出された。培養1日目では培地上に微小なコロニーを認め,コロニーのグラム染色及び延長培養を行った。グラム染色では菌糸の片側に胞子が並列する酵母様真菌が観察され,培養5日目の培地には皺があり,めり込んだように発育するコロニーを認めた。これらのグ...

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Published in医学検査 Vol. 74; no. 3; pp. 628 - 633
Main Authors 山崎 正明, 矢口 貴志, 小泉 達也, 林 亮, 中嶋 菜緒美, 小林 真二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.07.2025
日本臨床衛生検査技師会
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ISSN0915-8669
2188-5346
DOI10.14932/jamt.25-17

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Summary:Candida allociferriiはStephanoascus ciferrii complexの一種として提唱された稀な酵母様真菌であり,国内における分離例は眼窩内膿瘍からの1例のみが報告されている。今回,C. allociferriiによる外耳道真菌症の1例を経験したので報告する。症例は50歳代男性。右耳の掻痒感及び耳漏を主訴に受診し,耳漏検体が提出された。培養1日目では培地上に微小なコロニーを認め,コロニーのグラム染色及び延長培養を行った。グラム染色では菌糸の片側に胞子が並列する酵母様真菌が観察され,培養5日目の培地には皺があり,めり込んだように発育するコロニーを認めた。これらのグラム染色像やコロニーの形態は主要なCandida属との鑑別点になる可能性が示唆された。生化学的性状及び質量分析法による同定では正確な菌名を得られなかったが,ITS及びD1/D2領域の塩基配列解析により,C. allociferriiと同定した。本菌の正確な菌種同定には塩基配列解析が有用と考えられた。薬剤感受性に関して,本菌はアゾール系抗真菌薬に耐性傾向を示すとの報告があり,本症例においてもfluconazoleのMICが高値となった。侵襲性カンジダ症ではfluconazoleが第一選択薬として使用されることもあり,形態的特徴や培養所見から菌種を推定し,迅速に報告することが治療の一助になると考えられる。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.25-17