ハンセン病アーカイブズに求められるもの 「近現代ハンセン病資料アーカイブズ」の意義と課題

ハンセン病問題には多様な意見が存在しますが、それはハンセン病が社会的にも医学的にも非常に複雑な問題であることに起因しています。ハンセン病問題の理解には「ハンセン病問題の構図」を、サルファ剤であるプロミンに始まる一連の化学療法の時代以前・以後、日本と世界などの状況の違い、近代医学や公衆衛生政策の歴史、入所者や回復者の記録に併せて療養所関係者、政策担当者などの記録などを明瞭にした上で、各問題を考察する必要があります。このような前提から、ハンセン病資料アーカイブズには、資料の収集に加えて、これらの資料を時代や各予防法ごと、分野の違いなどで整理し、俯瞰的に、客観的に情報を提示するプロセスが重要です。ま...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 86; no. 2; pp. 121 - 127
Main Author 森, 修一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 2017
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:ハンセン病問題には多様な意見が存在しますが、それはハンセン病が社会的にも医学的にも非常に複雑な問題であることに起因しています。ハンセン病問題の理解には「ハンセン病問題の構図」を、サルファ剤であるプロミンに始まる一連の化学療法の時代以前・以後、日本と世界などの状況の違い、近代医学や公衆衛生政策の歴史、入所者や回復者の記録に併せて療養所関係者、政策担当者などの記録などを明瞭にした上で、各問題を考察する必要があります。このような前提から、ハンセン病資料アーカイブズには、資料の収集に加えて、これらの資料を時代や各予防法ごと、分野の違いなどで整理し、俯瞰的に、客観的に情報を提示するプロセスが重要です。また、ハンセン病資料アーカイブズには、多くの人々に情報を提供できること、学術的にも総合的 (多分野的) であり、偏向が少ないことも重要であると考えられます。このようなアーカイブズの試みとして「近現代ハンセン病資料アーカイブズ」注) 事業を紹介し、その利点のみならず課題も提示し、今後のハンセン病アーカイブズ構築の一つの形 (Web公開学術データベース) として話題を提供したいと思います。
ISSN:1342-3681
1884-314X
DOI:10.5025/hansen.86.121