人生100年時代 健康長寿と幸福長寿の両方の実現のために

要旨: 人生100年時代とも言われる世の中になり, いつまでも自立した生活を継続できることは, 多くの国民の願いである。国民が健康な生活と長寿を享受できる健康長寿社会の実現が急務となってきているが, 同時に, 生きがいも含めた『幸福長寿』の実現も目指すことも重要である。なかでも健康寿命延伸は国家戦略の中核であり, 多世代の共生やウェルビーイング向上も実現できる社会が期待される今, フレイル (虚弱) をいかに喰い留めるのかが鍵になる。加齢に伴う感覚器の機能低下は日常生活にも支障をきたし, それこそフレイル状態のステージをさらに増悪させる要因にもなる。なかでも「聴覚の低下」は, 社会参加の際にも...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 67; no. 4; pp. 229 - 237
Main Author 飯島, 勝矢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 30.08.2024
日本聴覚医学会
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Summary:要旨: 人生100年時代とも言われる世の中になり, いつまでも自立した生活を継続できることは, 多くの国民の願いである。国民が健康な生活と長寿を享受できる健康長寿社会の実現が急務となってきているが, 同時に, 生きがいも含めた『幸福長寿』の実現も目指すことも重要である。なかでも健康寿命延伸は国家戦略の中核であり, 多世代の共生やウェルビーイング向上も実現できる社会が期待される今, フレイル (虚弱) をいかに喰い留めるのかが鍵になる。加齢に伴う感覚器の機能低下は日常生活にも支障をきたし, それこそフレイル状態のステージをさらに増悪させる要因にもなる。なかでも「聴覚の低下」は, 社会参加の際にも地域活動や集いの場に参加してみても, 周囲の会話内容が聞こえないために十分に楽しむことが出来ない等の状況に陥り, 日常生活での社会性が減退していく恐れがある。また認知症診断において, 結果が過小評価されやすい問題もある。高齢化が急速に進行しているわが国において, 健康寿命延伸や認知症・フレイル予防のために高齢者の感覚器 (特に聴力) における早期スクリーニングや定期的ケアは非常に重要である。なぜならば, 単によく聴こえているかどうかという問題だけではなく, 高齢者の日常生活の質や広がりにも直結してくるからである。高齢者の難聴対策のための方策を地域コミュニティからの視点で考えてみると, 補聴器の迅速な適正化 (機能向上と価格設定等も含め) に加え, 公共の場に設置されているスピーカーも進化して欲しい。それらも含めて, 難聴の人にも優しい社会の構築 (すなわち Hearing Frailty-Friendly Community : 自身が装着する補聴器だけではなく, 周囲の環境側のアレンジも) も強く期待したい。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.67.229