高等教育政策の研究
本稿は高等教育政策の研究をレビューし、その課題を描出する。 1960年代後半には、国立国会図書館が高等教育政策研究を支えた。立法府の政策研究は、不偏性,とくに行政府からの独立を強い規範とする。立法府は多様な選択肢の中から特定のオプションを選択する。「決める」とは「偏る」ことであり,法を執行する行政府とその政策は本質的に偏っている。 近年の高等教育政策のアリーナは社会に開かれており,文科省や大学のみならず,政党,官邸,他府省,民間企業団体等の多様なアクターが参入する。行政運営が政治主導になり,文科省等の伝統的なアクターのみによる政策形成ではなくなった。しかし,高等教育政策研究は依然として,文...
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Published in | 教育社会学研究 Vol. 104; pp. 57 - 80 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本教育社会学会
30.06.2019
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Subjects | |
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ISSN | 0387-3145 2185-0186 |
DOI | 10.11151/eds.104.57 |
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Summary: | 本稿は高等教育政策の研究をレビューし、その課題を描出する。 1960年代後半には、国立国会図書館が高等教育政策研究を支えた。立法府の政策研究は、不偏性,とくに行政府からの独立を強い規範とする。立法府は多様な選択肢の中から特定のオプションを選択する。「決める」とは「偏る」ことであり,法を執行する行政府とその政策は本質的に偏っている。 近年の高等教育政策のアリーナは社会に開かれており,文科省や大学のみならず,政党,官邸,他府省,民間企業団体等の多様なアクターが参入する。行政運営が政治主導になり,文科省等の伝統的なアクターのみによる政策形成ではなくなった。しかし,高等教育政策研究は依然として,文科省の政策形成に寄与することを暗黙の使命としており,研究にはバイアスがある。一方で,特定の行政分野と結びつく各学問分野は固有の流儀で高等教育を扱うため,多様なアクターによる政策形成過程は学問分野間の代理戦争の様相を呈しつつある。 また,官邸主導,政治主導による行政運営の時代に,内閣,官邸,内閣官房を監視できるのは制度上,立法府だけである。また,委任立法が多く,政策の詳細は行政自身が決める。高等教育策研究は立法府の行政監視機能と連携の余地がある。 |
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ISSN: | 0387-3145 2185-0186 |
DOI: | 10.11151/eds.104.57 |